デイヴィッド・ベノワの新作です
ここバーチャル音楽喫茶『松和』は、ジャズのアルバム鑑賞がメインなんだが、ジャズの演奏ジャンルについては、全方向OKが個性。1970年代半ばから1980年代前半に大流行したフュージョン・ジャズもしっかりと守備範囲に入っている。意外と年配の硬派なジャズ評論家からは忌み嫌われるフュージョン・ジャズだが、ちゃんと聴いてみると、テクニック、アレンジ、演奏内容、どれもが一流のものが多くある。
ジャズのどこに重きを置いて鑑賞するかによって、フュージョン・ジャズの評価は変わるのだろうが、 フュージョン・ジャズは「商業ジャズ」で、ジャズのスピリッツが宿っていないなどという変な論理で、フュージョン・ジャズ盤を十把一絡げに「聴くに及ばず」とするのはちょっと乱暴だろう。事実、1970年代半ばから1980年代前半には、一般大衆から支持され、大いに聴かれたのだから、なにか響くものがあったはずである。
David Benoit『A Midnight Rendezvous』(写真左)。2022年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、David Benoit (p), Eric Marienthal, Sal Lozano (as), Gordon Goodwin (ts), Jay Mason (bs), Wayne Bergeron, Dan Fornero, Dan Rosenblum (tp), Francisco Torres (tb), Charlie Morillas (b-tb), Roberto Vally (b), Dan Schnelle (ds)。フュージョン〜スムース・ジャズを代表するピアニスト、デヴィッド・ベノワの最新作になる。
冒頭の「A Midnight Rendezvous」から、ベノワ節が全開。リリカルで耽美的。タッチは確かで流麗。ファンクネスは意外と希薄で、どこか米国の自然の風景を、原風景をイメージするような、ネイチャーな響きとフレーズが特徴。決して、アーバンでアダルトでは無い。この「ベノワ節」が僕は大好きなんです。そして、この盤には、ラストの「Cabin Fever」まで、ベノワ節満載。金太郎飴的、と言ってしまえばそれまでですが、ここまで熟達した個性であれば、これはこれでアーティスティックだと思います。
基本は、フュージョン〜スムース・ジャズ基調のビッグバンド仕立て。オフビートではあるが、ファンクネスは薄い。耽美的で流麗なフレーズが基本だが、グルーヴ感は強い。ビートがしっかり効いている分、どの曲にもメリハリが効いていて、聴いていて飽きることは無い。それより、ベノワの紡ぎ出す印象的なフレーズが、しっかりと耳に残って、聴いていてとても心地良い。
フュージョン〜スムース・ジャズの好盤です。テクニック、アレンジ、演奏内容、いずれも充実しているので、しっかりと聴き込むのも良し、何かをしながらの「ながら聴き」するのも良し、フュージョン〜スムース・ジャズ畑のベテラン・ミュージシャンが紡ぎ出す珠玉の10曲。純粋に音楽として聴くと、意外と「フュージョン〜スムース・ジャズもええなあ」と思ってしまうかもしれません。
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