スリー・サウンズのアレンジの妙
僕がジャズを聴き始めた頃、今を去ること40数年前になるのだが、その頃から、ブルーノートの企画型ピアノ・トリオ「The Three Sounds(スリー・サウンド)」の人気はイマイチだった。理由はいろいろあったらしいが、僕が記憶しているのは、レーベルが作った企画型のトリオだから、ブルーノートのドル箱トリオで商業主義のコマーシャルなトリオだから、スタンダード曲ばかり演奏していてオリジナリティーが無い、とかで、とにかく、ケチョンケチョンだった記憶がある。
ブルーノート・レーベルのドル箱トリオだったことは事実みたいで、オルガンのジミー・スミスの双璧の「ドル箱」トリオだったそうだ。とにかく判り易い内容、聴き心地の良いスタンダード曲をメインに演奏し、ラウンジ・ミュージックとしても、イージー・リスニングとしても聴くことの出来る「イージーさ」が米国ではウケて、我が国ではウケない理由なのかもしれない。
The Three Sounds『Hey There』(写真左)。ブルーノートの4102番。1961年8月13日の録音。改めて、ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ジャズの「多様化」の時代に差し掛かった、ブルーノートの企画型ピアノ・トリオの優秀盤である。
ラウンジ・ミュージックとしても、イージー・リスニングとしても聴くことの出来る「イージーさ」というが、このトリオの一番優れている点は「アレンジの妙」である。この盤も収録曲は全てスタンダード曲。しかも、俗っぽい「You Are My Sunshine」や「Stompin' at the Savoy」が入っていて、曲名だけみれば、これはもうイージー・リスニングなトリオ演奏なのか、と思うのだが、スリー・サウンズはそうはならない。
とにかく、アレンジが優れている。俗っぽい曲もしっかりしたアレンジで、硬派なファンキー・ジャズに仕立て上げられている。そう、この盤、優れたアレンジで、ちょっとマニアックなものから俗っぽいものまで、スタンダード曲を硬派なファンキー・チューンに変身させている。ネットリとソウルフルに陥ること無く、切れ味の良い、明快なファンキー・ジャズに留めているところが「良い」。
スリー・サウンズって、我が国の人気の無い理由は全く当たらないと思う。スタンダード曲ばかり演奏していてオリジナリティーが無いなんて言うが、このアレンジの優秀性は、自作曲を演奏するオリジナリティーに匹敵するレベルだと思う。そう、スリー・サウンズの最大の個性であり、最大の武器が、この「優れたアレンジ能力」なのだ。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて 【New】 2021.08.11 更新。
・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』
★ まだまだロックキッズ 【New】 2021.08.11 更新。
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から10年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« TRIXの「アニソン」カヴァー盤 | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・229 »
コメント