前進しチャレンジするデックス 『Stable Mable』
デクスター・ゴードン(Dexter Gordon、愛称「デックス」)は、北欧の老舗ジャズ・レーベル、SteepleChase Labelの看板テナーマンの1人だった。ゴードンが渡欧して、主にパリとコペンハーゲンに滞在した14年間の間に、SteepleChaseにて、30数枚分のリーダー作を録音している。恐らく、総帥プロデューサーのニルス・ウインターとの相性がかなり良かったのだろう。
Dexter Gordon『Stable Mable』(写真左)。1975年3月10日、コペンハーゲンの「Rosenberg Studio」での録音。SteepleChase LabelのSCS1040番。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts, ss), Horace Parlan (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Tony Inzalaco (ds)。デックスのサックスがワン・ホーン・フロント管のカルテット編成。
ワンホーン・カルテットなので、デックスのサックスの個性と歌心が心ゆくまで楽しめる。この盤でのデックスは、サックスを真摯にストイックに吹き上げている。引用などのお遊びを極力控え、硬派に力感溢れるサックスを聴かせてくれる。そんなストイックなサックスで吹くのは「スタンダード曲」。そう、この盤はデックスの「スタンダード曲集」。
チャーリー・パーカー作の「Red Cross」や、マイルス・デイヴィス作の「So What」などの、ミュージシャンズ・チューンズを吹きまくるデックスは意外と珍しい。特に、マイルスの「So What」などは、モード・ジャズの名曲なんだが、デックスがモーダルなフレーズを吹き上げるなんて、やはり、デックスはまだまだ「進歩する」サックス奏者だったことが、この盤を聴けば良く判る。
バックのリズム・セクションも優秀。デックスと同じく、NYから渡欧したホレス・パーランがピアノを担当。パーランのファンキーかつモーダルなピアノが、スティープルチェイスに「米国ジャズ」の雰囲気を持ち込んでいる。ベースのペデルセンは、北欧ジャズの至宝ベーシスト。ガッチリとビートの底を押さえ、演奏全体のリズムを整える。ドラムのインザラコは、渡欧組だがドイツ在住。堅実なドラミングで大健闘である。
ジャズ盤紹介本などでは全くタイトルが挙がらない盤であるが内容は濃い。特に、ジャズマンとして「前進する」姿を、音と選曲で教えてくれるデックスは実に頼もしい。そうそう、この盤ではデックスって、ソプラノ・サックスも吹いているみたいなんですよね。チャレンジ精神も旺盛な「欧州のデックス」である。
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