遅れてきた「才能」の秀作です
Andrew Hill(アンドリュー・ヒル)は、ブルーノート・レーベルの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが見出した「最後の才能」であった。時は1963年、ジャズの多様化とポップ化が進み、ヒルのアーティステックでモーダルなピアノは、あまりに硬派で先進的でウケなかった。
当時から、ライオンは、アンドリュー・ヒルを第一線に送り出せなかったことを後悔しており、1980年代にブルーノートが復活した時、ライオンがまず始めたことはアンドリュー・ヒルを再び売り出すことだった。
Andrew Hill『Divine Revelation』(写真)。スティープルチェイス・レーベルのSCS1044番。1975年7月10日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Jimmy Vass (fl, ss, as), Chris White (b), Leroy Williams (ds)。ジミー・ヴァスが1管のカルテット編成。北欧のスティープルチェイスであるが、NYでの録音になる。
オール・アメリカンのメンバーで、NYでの録音。スティープルチェイスは、デンマークのコペンハーゲンから、わざわざ、NYに単身飛んで、同様なNY録音を前作『Invitation』と続けて実施している。
この録音環境には意味がある。スティープルチェイス・レーベルの総帥プロデューサー、ニルス・ウインターは、ヒルの才能を買っていて、このヒルのピアノを記録することに、レーベルとしての使命を感じていたと思うのだ。
内容的には、ヒルのピアノの個性が充満している。「新時代のセロニアス・モンク」。判り易いモンクという感じの、予測可能な範囲で飛んだり跳ねたりするピアノ。そんな「癖の強いピアノ」で、思いっ切りモーダルなフレーズをガンガン弾きまくる。
非常にストイックで硬質なモード・ジャズが、実にヒルらしい。タッチも力強い、飛んだり跳ねたりするフレーズにスピード感が加わって、適度なテンション漲り、爽快感は抜群。ポップな響き、コマーシャルなイメージとは全く無縁。ファンクネスもかなり控えめで、スティープルチェイス独特のエコーと相まって、欧州らしい純ジャズな雰囲気が特徴的。
1975年は、ジャズ界ではフュージョン・ジャズの大流行が始まる頃。そんな時代に、こんな硬派でストイックなモード・ジャズが記録されていたとは、スティープルチェイス・レーベル恐るべしである。純粋に良質なジャズを記録し、真のジャズの歴史を記録に留める。そういうところが、スティープルチェイスが優れたジャズ・レーベルとして認識される所以だろう。
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