バドの最終スタジオ録音盤
バド・パウエルは、1959年、フランシス・ポードラの世話の下、パリに移住する。そして、正式盤として「A Tribute to Cannonball」「A Portrait of Thelonious」(共に1961年)、そして、1963年、パリにて、公式に発表されたスタジオ盤としては、最後の作品を録音する。その後、1964年に米国に戻り、1966年7月31日、鬼籍に入ることになる。
『Bud Powell in Paris』(写真)。1963年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Gilbert Rovere (b), Kansas Fields (ds)。プロデューサーは、かのジャズ・ジャイアント、デューク・エリントン。パウエル作の「Parisian Thoroughfare」以外、ジャズ・スタンダード曲で占められたピアノ・トリオ盤。
バドは、リラックスして楽しそうに演奏している風に聴こえる。演奏する曲は、おなじみのジャズ・スタンダード曲。イマージネーションは未だに豊か。その豊かなイマージネーションに指がついていかない部分が散見され、閃いたイメージを弾き切りたい、という前向きな気持ちが出過ぎて、タイム感がふらつく場面が散見されるが、出てくるピアノのタッチ、フレーズは紛れも無く「バド・パウエル」のピアノである。
1963年と言えば、逝去する3年前。既に健康状態は最悪だった様な気がするのだが、スタンダード曲を弾かせると、やはりバドは凄い。イントロの展開、テーマの崩し方、アドリブ・フレーズの閃き、指がついていかない部分があるとはいえ、やはりバドはバド。一定以上の水準を維持しているから凄い。しかもこの盤でのバドのピアノは「明るい」。ポジティヴにリラックスして弾きまくる。
完璧だったバドが「ミスりヨレる」からこそ良い、なんていうのは余りにセンチな評論だと思う。聴けば判るが、確かにバドは「ミスるヨレる」、タイム感がところどころ「ズレる」のだが、バドの表現しようとする「閃いたフレーズ」が、そのバドの「ミスるヨレるズレる」まで全てをひっくるめて、バド・パウエルの当時、最新のパフォーマンスなのだ。この盤の演奏の全てが「バド」なのだ。それが心に沁みる。
僕は、この盤のバドの、明るくポジティヴにリラックスして弾きまくる音が好きだ。確かにミスタッチはある。確かにタイム感はところどころズレる。しかし、紡ぎ出すフレーズは、紛れも無く「バドの即興フレーズ」なのだ。この唯一無二の個性的な即興パフォーマンスはいつ聴いても良い。特に、彼独特のそこはかと漂う哀愁感が堪らない。
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