久し振りの「パウエル節」である
昔に活躍したジャズマンを起用してスタンダード曲を演奏させる、そんな「昔の名前で出ています」的なアルバムを制作してリリースする。ヴィーナス・レコードの十八番であるが、そう言えば、欧州の老舗ジャズレーベル、スティープルチェイス・レーベルも同じ様なアルバム作りをしていたような気がしてきた。
米国のジャズ・シーンの居心地が悪くなり、欧州へ移住した一流ジャズマンにリーダー作制作の機会を与え、数々の優秀盤を世に送り出したのが、スティープルチェイス・レーベル。まあ、こちらの場合、日本人好みのスタンダード曲やバラード曲などは演奏させなかったが。ただ、アプローチは似たようなところがあって、僕はこのスティープルチェイスの「昔の名前で出ています」的なアルバムが好きだ。
Bud Powell Trio『1962 Stockholm Oslo』(写真左)。1〜5曲目が、1962年3月、ストックホルムでの録音。6曲目から9曲目までが、1962年11月、オスロでの録音。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Erik Amundsen (b), Ole Jacob Hansen (ds)。ベースのエリック・アムンゼン、ドラムのオレ・ヤコブ・ハンセンは、共にノルウェー出身。
リーダーでピアノ担当のバド・パウエルは、お馴染み「モダン・ジャズ・ピアノの祖」と呼ばれる早逝の天才ピアニスト。パウエル派1959年、パリに移住している。その欧州滞在の機会を捉えて、スティープルチェイスは、パウエルのリーダー作を録音している。「at the Golden Circle」シリーズがつとに有名。今回の『1962 Stockholm Oslo』の前半5曲は、その「at the Golden Circle」シリーズの録音の2日前、同じく「Golden Circle」での録音とのこと。
このアルバムでのパウエルは体調はまずまずだったのでは無いか。寛いだ雰囲気で、お馴染みの癖のあるタッチとノリで、パウエルは鼻歌を唄うかの様にピアノを弾き進めている。全盛期の切れ味抜群、何かが取り憑いたようなイマージネーション溢れるアドリブは望むべくもないが、なかなか聴き心地の良い「パウエル節」を堪能させてくれる。難しいこと言いっこ無しで、パウエルらしい弾きっぷりを楽しませてくれる。
全盛期を過ぎたとは言え、パウエルの個性はまだまだ尖っていて、唯一無二のバップ・ピアニストという点で人後に落ちない。今回のアルバムや「at the Golden Circle」シリーズの様に、普段着の寛いだパウエルが、気持ちの赴くままに、バップなピアノを気持ちよさそうに弾く。それで良いではないか。歴史を変えるような名盤な内容では無いが、久し振りに「パウエル節」を楽しませてくれる好盤だと思う。
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