ジャズの音表現のポテンシャル
ジャズは「娯楽の音楽」である。が、アーティスティックな「表現の音楽」でもある。楽しく聴けるジャズも良し。アートとしてジックリと聴き込むジャズも良し。ジャズの音表現のポテンシャルは高い。演奏するスキル&テクニックが優秀である前提はあるが、ジャズの音表現のバリエーションは無限であるように感じる。
Terence Blanchard『Absence』(写真左)。2021年10月、ブルーノート・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Terence Blanchard (tp), Fabian Almazan (p), Charles Altura (g), David Ginyard (b), Oscar Seaton (ds), with The Turtle Island String Quartet。来年、還暦を迎える大ベテラン・トランペッター、テレンス・ブランチャード率いるバンド「E-Collective」に Turtle Island Quartetも加えた3年振りの力作。
ブランチャードが尊敬してやまない、ジャズ・レジェンド、ウェイン・ショーターへのオマージュ作品。収録曲は、ショーターが書いた作品と、ブランチャードと彼のバンドのメンバーによるオリジナルの作曲で構成されているが、楽曲の雰囲気とイメージは明らかに「ウェイン・ショーターの音世界」オンリーである。
ブランチャードの「E-Collective」のギター入りクインテットに、ジャズ志向の弦楽四重奏が加わった、音の厚みと表現力の幅が素晴らしい演奏ばかりで思わす圧倒される。音の迫力はジャズ・ビッグバンドを聴いているかの様な「分厚い」もの。それでいて、音の切れ味と歌心溢れるフレーズに、思わず耳が釘付けになる。ジャズって、ここまで音による表現の可能性があるんだなあ、と再認識する。
ウェイン・ショーターの楽曲は、コズミック、ネィチャー、そして、呪術的。楽曲の持つフレーズは、一捻りも二捻りもしていて、必要となる演奏力は格段に高い。しかし、ショーターの楽曲の持つ音の「拡がり、深み、自由度、表現力」は圧倒的。そんな難曲をガンガンに、アーティステックに演奏していく。この「E-Collective」+「The Turtle Island String Quartet」の演奏力と表現力は凄まじいものがある。
コマーシャルな要素、ポップな要素とは全く無縁。全編に渡って、硬派でアーティステック、モーダルで、しっかりと統制の取れた厚みのある音が満載。現代ジャズを構成する奏法、演奏トレンドが総動員、現時点での「ジャズの音表現」の全てが詰まっている。ネット上ではあまり話題になっていない盤ではあるが、ジャズ者ベテランであれば一聴の価値あり、と思う。
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