今もブレないロスネスである。
1984年7月、ブルーノート・レーベルが復活。その象徴的な出来事として、1985年2月22日、復活イベント「ワン・ナイト・ウィズ・ブルーノート」が開催される。この時期を境に、純ジャズ復古のムーヴメントが起きる。旧来の一流ジャズマンが、メインストリームな純ジャズに回帰、有望な新人も、メンストリームな純ジャズをメインとして取り組み出した。
このムーヴメント、若手ジャズマンを中心に推し進められ、まず、ウィントン・マルサリスをリーダーとする「新伝承派」なる集団が立ち上がる。従来のハードバップを最良のジャズと位置づけ、ジャズのスタイルを規範とし、それを再現する演奏をするもの。
それに相対するのが「M-BASE派」。変拍子の複雑なリズムを取り入れ、バップやモードというジャズの伝統的な語法を使用しないで演奏形式の革新を目指したもの。この2大勢力が、純ジャズ復古のムーヴメントを推し進めていった。
Renee Rosnes『Kinds of Love』(写真左)。2021年3月31日、4月1日、NYの「Sear Sound Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Renee Rosnes (ac-p,el-p,vo), Chris Potter (ts, ss, fl, b-cl), Christian McBride (b), Carl Allen (ds), Rogério Boccato (perc, vo)。M-BASE派のリニー・ロスネスをリーダーとした、パーカッション入りのクインテット編成。
まず、パーソネルを眺めて、強力なラインナップに期待感が高まる。いわゆる「新伝承派」にしろ、「M-BASE派」にしろ、演奏力の高さがその成果に物を言うので、このパーソネルについては全く申し分無い。
冒頭「Silk」を聴いてみても、その演奏力の高さに思わず感心する。変拍子だろうが、モードだろうが、全く異にすることなく、完璧に演奏する。実にレベルの高い「ネオ・ハードバップ」な演奏である。
収録された曲は全てロスネスの自作曲で、ハードボイルドでストイックな純ジャズ志向の楽曲で占められている。甘さやポップさは皆無。シャープなファンクネスを演奏の底に漂わせながら、疾走感溢れる、切れ味の良いネオ・ハードバップな楽曲が見事である。演奏力の高さから、この難度の高い楽曲についても、どこか安心して聴き通すことが出来る。
演奏の基本は、やはりリーダーのロスネスの志向である「M-BASE派」的なもの。ラップやソウル,ファンク音楽やエスニック音楽など,その時代時代で隆盛を極めた音楽スタイルを取り入れる様な、奇をてらったところは無い。がっつりコンテンポラリーな「創造的な純ジャズ」を志向している。但し、決して難しい演奏では無い。判り易い正統な純ジャズである。
ロスネスの志向がブレていないことに改めて感心した。今年で59歳。還暦一歩手前な年齢にも関わらず、若い頃の様にロスネスの演奏は「尖っている」。年齢を重ねることによる「余裕」は感じられるが、紡ぎ出すフレーズは「尖っている」。それに呼応する様に、サイドマン達も負けずに「尖っている」。良い意味で爽やかな尖ったコンテンポラリーな「創造的な純ジャズ」。聴き終えて、なぜかスカッとした。
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