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2021年12月 9日 (木曜日)

シェップが吹くジャズ・バラード

最近、ヴィーナス・レコードのカタログを見直しているのだが、レーベルの最初の頃は、かなり硬派なアルバムのリリースをしていたみたいで、ハードバップ時代やフリー時代の好盤のリイシューや、新盤については、フリー・ジャズ、もしくは、ワールド・ミュージック志向のニュー・ジャズなど、どちらかというと「欧州的」なジャズ盤のリリースをしていたようだ。

Archie Shepp Quartet『Blue Ballads』(写真左)。1995年11月24−25日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Archie Shepp (ts, ss, vo), George Mraz (b), John Hicks (p), Idris Muhammad (ds)。フリー・ジャズ、ブラック・ファンクの代表的サックス奏者、アーチー・シェップがリーダーの、ワンホーン・カルテット。

これがまあ、当時「問題作」とされたアルバムで、なんせフリー・ジャズ、ブラック・ファンクの猛者に、全編ジャズ・バラードの企画盤のリーダーを張らせているのだ。ジャズ・バラードの演奏内容も、とてもオーソドックスで、メインストリームな純ジャズ風で、フリー・ジャズや、ブラック・ファンクの欠片も無いのだ。当時、硬派なジャズ者の方々から、金の力で「やらせのヴィーナス」と揶揄されたのも無理は無い。
 

Blue-ballads_1

 
しかし、冷静になって考えると、シェップは優れたサックス奏者であって、当然、オーソドックスで、メインストリームな純ジャズ風な演奏だって、水準以上のパフォーマンスをすることだって、当然出来る。この企画盤も、プロデューサーからの要請を受けて、シェップが「チャレンジブル」に取り組んだものと解釈するのが妥当だろう。

この盤、シェップの「異色の好盤」だと思う。この盤でのシェップのサックスは聴き応え十分。聴いていて惚れ惚れする。もともと骨太で切れ味の良いテナーを吹くシェップである。そのテナーでバラードを吹く。骨太で切れ味の良いテナーの音が、悠然とエモーショナルに耽美的にバラードを表現する。説得力抜群である。有名なジャズ・バラードばかりの選曲だが「手垢の付いた」感が全く無い。とても新鮮に響く。

ちなみに、この盤のジャケット、これがまた当時、賛否両論を巻き起こした「セミヌードのジャケ写」。ジャズらしく無い、エロチックで趣味が悪い、セミヌードを採用する意味が判らない、など否定的な意見の方が多かった。まあ、確かに、ジャズのアルバムのジャケットにセミヌードを持ってくる必然性は感じられない。これは日本ならではのものだろう。まず海外ではあり得ない。と思う。
 
 
 
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