ヴィーナスの硬派な純ジャズ・5
昔に活躍したジャズマンを起用してスタンダード曲を演奏させる、そんな「昔の名前で出ています」的なアルバムを制作してリリースする。ヴィーナス・レコードの十八番であるが、如何せん、評判が良くない。しかし、この「昔の名前で出ています」的なアルバムの中にも、優れた内容の盤もあるのだから、見逃すわけにはいかない。
Claude Williamson Trio『South of The Border West of The Sun』(写真)。邦題『国境の南・太陽の西』。1992年12月15日、North Hollywoodの「The Bakery ecording Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Claude Williamson (p), Andy Simpkins (b), Al "Tootie" Heath (ds)。
収録曲を見渡すと「スタンダード曲」ばかりが並ぶので、第一印象は「昔の名前で出ています」的なアルバムかあ、と思ってしまう。解説を読むと、村上春樹のベストセラー恋愛小説『国境の南・太陽の西』に登場するスタンダードの名曲を取り上げた企画盤とのこと。なるほど、ちょっと理屈を付けてみたのね、と苦笑いしてしまう。
クロード・ウィリアムソンは、米国西海岸ジャズを代表するピアニストの1人。テクニック優秀、とにかく端正でタッチが歯切れ良く、アクや癖はほぼ無い。ライトで流麗な弾き回しが素敵なピアノである。米国西海岸ジャズにおける「バップなピアノ」として僕は捉えている。
が、ウィリアムソンのリーダー作は「決定打」に欠けていたと思うのだ。ジャズ盤紹介本を紐解いても、ベツレヘム・レーベルからのリリースした『'Round Midnight』か、後続の『Claude Williamson』の2枚しか、代表作としてタイトルが挙がらない。この2枚、確かに内容的には良いのだが、米国西海岸ジャズの特徴である「お洒落なアレンジ」が逆効果なのか、ジャズ・ピアノとしては、何か今1つ足らない感じが残る。
その点、このヴィーナス盤の『国境の南・太陽の西』は、アレンジは「ハードバップど真ん中」の王道アレンジ。そんな旧来のハードバップなアレンジに乗って、クロード・ウィリアムソンは「バップなピアノ」をバリバリ弾きまくる。録音当時66歳なのだが、とにかく、バリバリ弾いている。
「ハードバップど真ん中」の王道アレンジの下でバリバリ弾きまくることで、ウィリアムソンは「総合力」で勝負するタイプのピアニストであることが良く判り、「総合力」で勝負するタイプであるが故に「テクニック優秀、とにかく端正でタッチが歯切れ良く、アクや癖はほぼ無い、ライトで流麗な弾き回し」という個性が、バリバリ弾き回すことによって、良い方向に作用している。
このヴィーナス盤の『国境の南・太陽の西』は、クロード・ウィリアムソンの代表作として良いと思っている。アレンジを気にすること無く、聴き手の「ウケ」を気にすること無く、バリバリと、本来の個性である「バップなピアノ」を弾きまくっている分、1950年代の米国西海岸ジャズでの代表盤より優れていると思う。
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