ピアノ・トリオの代表的名盤・96
Andrew Hill(アンドリュー・ヒル)は、ブルーノート・レーベルの総帥、アルフレッド・ライオンが見出した「最後の才能」。1963年録音の名盤『Black Fire』を皮切りに、1963年から録音から手を引いた1967年まで、4年間で8枚ものリーダー作をリリースした。それでも、ライオンは、アンドリュー・ヒルを第一線に送り出せなかったことを後悔しており、1980年代にブルーノートが復活した時、ライオンがまず始めたことはアンドリュー・ヒルを再び売り出すことだった。
Andrew Hill『Invitation』(写真)。SteepleChaseレーベルの SCS1026番。1974年10月17日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Chris White (b), Art Lewis (ds)。欧州の老舗レーベルでの録音だが、オール・アメリカンな「ピアノ・トリオ」での、ヒルのリーダー作になる。
ジャズ・ピアニストの個性を確認するには、ピアノ・トリオが最適だろう。ソロ・ピアノが最適、とする向きもあるが、ジャズ演奏の中でのパフォーマンスとして、ジャズ・ピアニストの個性を感じるには、ピアノ・トリオだろう。そういう面では、ヒルのブルーノート時代、ピアノ・トリオ編成のリーダー作は『Smoke Stack』一枚のみ。デビューしたての頃のパフォーマンスなので、まだ初々しさが抜けていない分、個性も少し抑え気味。
アンドリュー・ヒルのピアノは、一言でいうと「新時代のセロニアス・モンク」。判り易いモンクという感じの、予測可能な範囲で飛んだり跳ねたりするピアノ。「癖の強いピアノ」という表現がまずまずフィットする感じ。加えて、幾何学模様的にスイングするような「捻れ」が個性。この個性が、SteepleChaseでの『Invitation』を聴くと、手に取るように判る。
ホワイトのベース、ルイスのドラムのリズム隊が、ヒルのピアノの個性に上手くついて行っている。これがこの盤の良さで、ヒルは気持ちよさそうに、個性的なピアノを弾きまくる。デビューした頃とは違った、余裕が感じられる「予測可能な範囲で飛んだり跳ねたりするピアノ」。ベースラインはパーカッシヴで、力感溢れる、パッキパキ硬派なモーダルなピアノである。
ヒルがSteepleChaseレーベルに残したリーダー作は、1970年代の2枚のみ。ヒルがどういう動機で、SteepleChaseレーベルにリーダー作を残したか判らないが、このピアノ・トリオ盤は「良い仕事」である。SteepleChaseレーベルでの録音なので、どこか欧州ジャズの響きと雰囲気が漂うところが、ヒルのピアノの個性を際立たせている。良いピアノ・トリオ盤だ。
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