スティープルチェイスのフリー盤
ジャキー・マクリーン(Jackie McLean)は、前進するアルト・サックス奏者だった。ハードバップ前期に第一線に躍り出て、人気ジャズマンとして、多くのリーダー作、サイドマンとしての参加作を残した。そして、ジャズの演奏スタイルの深化と多様化の時代に入ると、ハードバップから、モード、フリーと、変化を恐れず、演奏スタイルを自らが変化させていった。
Jackie McLean & Michael Carvin『Antiquity』(写真左)。1974年8月16日、コペンハーゲンでの録音。Steeplechaseレーベルの SCS 1028番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as, p, vo, bamboo-fl, bells, temple block, perc), Michael Carvin (ds, vo, temple block, bells, bamboo-fl, kalimba, perc)。マクリーンとカルヴィンがマルチ奏者として、デュオ演奏に臨んでいる。
マイケル・カルヴィンは、米国ヒューストン出身のジャズ・ドラマー。1970年辺りから頭角を現した「遅れてきた」純ジャズなドラマー。そのパフォーマンスは、当時の先端を行く正統なジャズ・ドラミング。しかし、当時、ジャズは斜陽の「ポップス音楽」となっていて、その優秀なドラミングがほとんど話題にならなかったのは気の毒であった。
マクリーンとカルヴィンがマルチ奏者して演奏しているので、基本は多重録音。グループでの一発録りの「切れ味とスピード感」に欠けるのは仕方の無いこと。但し、どちらも演奏テクニックは極上の一流ミュージシャンなので、録音されたパフォーマンスは水準点以上。特に、マクリーンの本業のアルト・サックス、カルヴィンの本業のドラムについては、その演奏内容は申し分無い。
この盤に詰まっているジャズは「フリー・ジャズ」そして「スピリチュアル・ジャズ」。1960年代のマクリーンのフリー・ジャズへのチャレンジはお世辞にも成功しているとは思えない演奏もあったが、この盤では、既にフリー・ジャズは一定の成熟を迎えているので、その成功例を基に、マクリーン&カルヴィンはまずまずのフリー・ジャズを展開している。が、どこか「安全運転」風な感じがするのは、多重録音であるが故の弱点かもしれない。
2人のボーカルも入っていて、その雰囲気は「スピリチュアル・ジャズ」。まあ、これはご愛嬌。スティープルチェイスの「スピリチュアル・ジャズ」は、どこか寝ぼけたようなボーカルが入っていることが多くて、これについては、Nils Wintherのプロデュースには疑問符が付くなあ(笑)。欧州ジャズらしいといえば、欧州ジャズらしい安全運転の「フリー・ジャズ」。あまり尖っていない分、どこか物足りなさが残る。
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