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2021年11月12日 (金曜日)

スティープルチェイスのモード盤

知る人ぞ知る、地味な存在だが、「端正」「整然」「穏健」と三拍子揃った個性派テナー奏者であった「クリフォード・ジョーダン(Clifford Jordan)」。ブルーノート・レーベルからリーダー作の機会を与えられ、3枚のリーダー作をリリース。ブルーノートを離れて、1960年代は他のレーベルを転々とし、1975年には集中して、Steeplechaseレーベルからリーダー作を5枚リリースしている。

Clifford Jordan and Magic Triangle『Firm Roots』(写真左)。1975年4月18日、西ドイツ(当時)のミュンヘンは「Trixi Ton」スタジオでの録音。Steeplechaseレーベルの SCS1033番。ちなみにパーソネルは、Clifford Jordan (ts, fl), Cedar Walton (p), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。シダー・ウォルトンのピアノ・トリオをリズム・セクションに、ワンホーン・カルテットの編成。

「Magic Triangle」って何だ、と思ってパーソネルを見たら、シダー・ウォルトン、サム・ジョーンズ、ビリ−・ヒギンスのトリオのことを指すらしい。まあ、どうでも良いことなんだが、クリフォード・ジョーダンのテナーの個性がジックリと楽しめる「ワン・ホーン」カルテット。1975年での、欧州ジャズのレーベルである「Steeplechase」からのリリースだが、ジョーダンのテナーの音は、1957年のデビュー当時と全く変わらないから嬉しい限り。
 

Firm-roots

 
どういう経緯で録音に至ったかは判らないが、リーダーのジョーダン含め、米国東海岸でモーダルなジャズをやりまくっていた4人がわざわざ西ドイツ(当時)まで飛んで録音している。録音の音の雰囲気が十分に「Steeplechase」していて、この盤の内容としては「欧州のモード・ジャズ」という雰囲気で統一されている。1970年代の上質のモード・ジャズな演奏がこの盤に詰まっている。

バキバキ硬派でストイックなモード・ジャズ。コマーシャルな面や、聴き手に迎合するところは全く無い。欧州ジャズとしては、こういう硬派でストイックなモード・ジャズが、まだまだ「ウケた」のだろうか。モーダルなフレーズの中に、しっかりとしたグルーヴ感が備わっていて、純ジャズを聴いているなあ、モード・ジャズを聴いているなあ、という気分になる。これが心地良い。モーダルなジャズは「硬派でストイックなグルーヴ感」がマストである。

1975年と言えば、米国では、純ジャズは「マイナーな音楽」のレッテルを貼られ、クロスオーバー・ジャズがウケていた時代。さすが純ジャズを愛する欧州のジャズ・シーンである。そのお陰で、1970年代の「硬派でストイックなグルーヴ感溢れるモード・ジャズ」の音源が、こうやって確保されたのだから、ありがたいことだ。
 
 
 
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