ジャズ喫茶で流したい・222
デクスター・ゴードン(Dexter Gordon、愛称「デックス」)は、ジャズ・サックスのレジェンド中のレジェンド。1923年生まれ、1990年、67歳で鬼籍に入っている。1940年代のビ・バップ時代から第一線で活躍、しかしながら、1950年代は麻薬禍のため活動が低迷、1960年代初頭にブルーノートに複数の秀作を残した後、1976年にかけて渡欧し、フランスやデンマークを拠点に活動。1976年以降は米国に戻りカムバックしたが、活動はフェードアウト。
デックスのサックスは「骨太で大らかで、ダンディズム溢れる、悠然とした」サックス。基本はビ・バップ。フリーやスピリチュアルな奏法には目もくれず、ハードバップなブロウを維持し続けた。高速な弾き回しはしないが、テクニックは優秀。加えて、アドリブ・フレーズは歌心満点。鼻歌を唄うが如く、時折、有名曲の引用なども交えて、聴き応えのある吹き回しが素晴らしい。
Dexter Gordon & Orchestra『More Than You Know』。1975年2月, 3月、コペンハーゲンでの録音。スティープルチェイス・レーベルのSCS 1030番。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts, ss, vo), Thomas Clausen (ac-pi, el-p), Kenneth Knudsen (syn), Ole Molin (g), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Alex Riel, Ed Thigpen (ds), Palle Mikkelborg (arr, cond) with Stirings。
デックスの「ウィズ・ストリングス」盤になる。「ウィズ・ストリングス」盤と言えば、ちょっと甘いストリングスをバックに、流麗なフレーズを吹き上げながら、ちょっとイージーリスニング風の内容を想起する。この盤についても、聴く前は「へー、デックスも甘々なウィズ・ストリング盤を出してたんや」と思って、暫く敬遠していた。
が、聴いてみて「あらビックリ」である。デンマークのジャズ・トランペッター兼作曲家、パレ・ミッケルボルグによるによるストリングスの作編曲が、かなりプログレッシヴな内容。このミッケルボルグの作編曲によるストリングスは、スケールが大きく、独特の美しい響きを湛え、それでいて、要所要所でどこか現代音楽や現代クラシック音楽を想起するフレーズが散りばめられている。
デックスは、この現代的でプログレッシヴなストリングスに呼応して、時に豪快に、時に繊細に、情感豊かで歌心溢れるフレーズを吹き分けている。この「吹き分け」が素晴らしくて、ハードバップらしくコードに忠実なブロウもあれば、モーダルなブロウもある。ゆったりと静的なスピリチュアルなフレーズもあれば、ちょっとアブストラクトなフレーズも吹き上げる。
デックスの「骨太で大らかで、ダンディズム溢れる、悠然とした」サックスと、デックスの持つサックス表現&テクニックの優秀さを実感出来る、素晴らしい内容の「ウィズ・ストリングス」盤である。デックスのサックスの全ての表現がこの盤に詰まっている、と言っても良いか、と思う。デックスが、これだけ先進的に現代的にサックスを吹きまくるとは、聴き終えた後、思わず「スタンディング・オベーション」である。
さすが、北欧の「ブルーノート」と称されるスティープルチェイス・レーベル。この盤では、デックスのサックス奏者としての能力の全てを引き出している。そんな要求に臆すること無く、何事も無かったかの様に、自然体で最高のサックスを吹き上げるデックスは、とても格好良い。脱帽である。
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