« ヴィーナスの硬派な純ジャズ・1 | トップページ | ヴィーナスの硬派な純ジャズ・3 »

2021年11月22日 (月曜日)

ヴィーナスの硬派な純ジャズ・2

昨日のブログの冒頭にも書いたのだが、ヴィーナス・レコードには、しっかりとしたコンテンポラリーな純ジャズ風の、内容の確かな盤も結構ある。米国以外の欧州ジャズ系の、日本ではほとんど知られていなかった優秀なジャズマンにも、リーダー作の機会を作って、なかなかの好内容の盤をリリースしている。確かに、コマーシャル先行、懐メロ志向のアルバム作りの傾向もあるが、反面、本来の硬派なジャズ・レーベルの志向もあるということは理解しておく必要はあるだろう。

The Jacky Terrason Jazz Trio『Lover Man』(写真)。1993年11月18&19日、NYの「Clinton Studio "A"」での録音。ちなみにパーソネルは、Jacky Terrasson (p), Ugonna Okegwo (b), Leon Parker (ds)。1993年の「セロニアス・モンク・コンペティション」で優勝した逸材ピアニストのトリオ演奏。テラソンの初リーダー盤。

冒頭、ダイナミックなアレンジが施された「Donna Lee」の、テラソンのバリバリ弾きまくるバップなピアノに度肝を抜かれる。フレーズのアクセントの置き方が独特で、モンクのアクセントで高速バップなフレーズを弾きまくる、とでも形容したら良いだろうか。縦揺れでスクエアなスイング感が独特な雰囲気を醸し出している。
 

Lover-man_1

 
そんな独特な個性のテラソンのピアノに、次の『Nardis』では、さらに度肝を抜かれる。耽美的でモーダルなバップ・ピアニスト、ビル・エヴァンスの演奏がスタンダードな名曲だが、テラソンは、縦ノリでスクエアなスイング感溢れる「バップなイメージ」で、モーダルなフレーズをガンガンに弾きまくる。これ、当時、むっちゃ新鮮だった。

高速バップなピアノであるが破綻は全く無い。高速バップなピアノで、モーダルなフレーズを弾きまくるので、一方では「弾き過ぎ、アレンジのし過ぎ」なんて評価もあったくらいだ。別にモーダルな演奏は高速フレーズであってはならない、なんてことは無いので、やはり、テラソンの独特な個性をポジティヴに捉えて、この盤に充満する「新しい響き」に耳を傾けるのが正解だろう。

と、僕は感じているのだが、ネット上でもジャズ盤紹介本でも、このテラソンの『Lover Man』について、コメントしているジャズ者の方々が本当に少ないのは意外だった。あまり、皆、聴かないのかなあ。ヴィーナス・レコードからのリリースということで、意外と皆、先入観優先でスルーしているのかも知れない。「高速バップなピアノで、モーダルなフレーズを弾きまくる」って、面白いと思うんだがなあ。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

« ヴィーナスの硬派な純ジャズ・1 | トップページ | ヴィーナスの硬派な純ジャズ・3 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ヴィーナスの硬派な純ジャズ・1 | トップページ | ヴィーナスの硬派な純ジャズ・3 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー