スティープルチェイスの珍盤奇盤
「1970年代北欧のブルーノート」と称されたデンマークの名門ジャズレーベルである「スティープルチェイス」。デンマークのニルス・ウインターが、1972年立ち上げたジャズ・レーベルで、1970〜80年代を中心に、ジャズ史に残る名盤を数多く生み出した欧州ジャズ・レーベルの老舗。
カタログを見ていると、さすが「1970年代北欧のブルーノート」と言われるだけあって、正統派なジャズ、いわゆるメインストリームな純ジャズが大半を占めていて、1970年代のハードバップの宝庫と呼ぶべき充実度である。そんな中で、あれっと思うような、内容のジャズも存在する。フリー・ジャズ、スピリチュアル・ジャズ、そして、エレ・ジャズな内容の「珍盤」があるから面白い。
Billy Gault『When Destiny Calls』(写真)。1974年10月29日の録音。Steeplechaseレーベルの SCS1027番。ちなみにパーソネルは、Billy Gault (p), Bill Saxton (ts), Billy Skinner (tp), James 'Fish' Benjamin (b), Michael Carvin (ds), Ellen Deleston, Joe Lee Wilson (vo)。NY出身の黒人ピアニスト、ビリー・ゴールトがリーダーのクインテット編成にボーカルが入る。
冒頭の「The Time Of This World Is At Hand」の出だしから、妖しげで不確かなボーカルが入るから、思わず「オヨヨ」と思う。何だこれ、と思いながら聴き進めて行くと、華奢ではあるがパーッカシヴな、どこかで聴いた様な響きのピアノが入る。これって、この響きって「マッコイ・タイナーか?」と思う。フレーズは明らかにモーダル。冒頭の妖しげなボーカルと併せて、この盤、コルトレーン晩年のスピリチュアル・ジャズのオマージュと理解した。
ビル・サックストンのテナー・サックスが入ってきて、その印象は確信に変わる。確かに、この盤の音世界は「コルトレーン晩年のスピリチュアル・ジャズ」。その「コルトレーン晩年のスピリチュアル・ジャズ」から重量級の迫力を差し引いた、華奢で繊細なモーダルな演奏をベースに、スピリチュアルなジャズを展開している。が、こぢんまりした「コルトレーンのスピリチュアル・ジャズ」な印象に留まって、その音作りは成功しているとは思えない。
せめて、中途半端なボーカルは不要だったなあ。21世紀に入ってから「静的なスピリチュアル・ジャズ」が現れ出でるが、この盤の演奏自体が中途半端でテクニック不足な内容なので、どうにも中途半端な印象に留まってしまう。欧州ジャズがチャレンジした「コルトレーン晩年のスピリチュアル・ジャズ」の、まだまだこれからの貴重な記録として僕は聴いた。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて 【New】 2021.08.11 更新。
・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』
★ まだまだロックキッズ 【New】 2021.08.11 更新。
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から10年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« オルガン・ジャズの名盤 『Midnight Special』 | トップページ | スティープルチェイスのフリー盤 »
« オルガン・ジャズの名盤 『Midnight Special』 | トップページ | スティープルチェイスのフリー盤 »
コメント