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2021年11月23日 (火曜日)

ヴィーナスの硬派な純ジャズ・3

ヴィーナス・レコードについては、コマーシャル先行、懐メロ志向のアルバム作りがメインのような誤解があるみたいだが、カタログ順に、ヴィーナス・レコードのアルバムを聴き進めて行くと、確かに、コマーシャル先行、懐メロ志向のアルバムもあるが、本来の硬派なジャズ・レーベルの志向もしっかりあることが判る。この硬派な部分のアルバムが結構、興味深い内容なのだ。

The Moffett Family Jazz Band『Magic of Love』(写真左)。1993年10月2日、NYの「R.P.M. Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Mondré Moffett (tp), Charles Moffett, Jr. (as, ts), Charnett Moffett (b), Codaryl "Cody" Moffett (ds), Charles Moffett, Sr. (ds, vib), Charisse Moffett (vo)。米国ジャズ界の有名ファミリーである、モフェット・ファミリーの総出演の好盤。

むっちゃ硬派で実直な「ネオ・ハードバップ」な内容である。甘いところ、ポップなところは全く無い。聴き手に迎合するアプローチも一切無い。硬派でストイックな、コンテンポラリーな純ジャズである。アフリカン・ネイティヴな響きもそこかしこに感じられ、単純な懐古趣味なハードバップでは無い、ワールド・ミュージック志向のアフロ・ジャズな雰囲気が心地良いアルバムである。
 

Magic-of-love_1

 
ビートの効いた純ジャズ・ファンクな「Peace On My Mind」、父親のチャールス・モフェットの、乾いたファンクネスを纏ったヴァイブの音が芳しい、エキゾチックな雰囲気漂う「My Shirley Jean」、娘のシャリース・モフェットによる、躍動感溢れるアフロチックな女性ヴォーカルが入った「Magic Of Love」など、アフロな響きを宿したコンテンポラリーな純ジャズ風の演奏に耳を奪われる。

バンド全体をリードし、リズム&ビートを締めているのが、息子のチャーネット・モフェットのベース。ブンブンとソリッドな心地良い重低音を響かせながら、堅実で正確なリズム&ビートを供給、音色の変化でバンド全体にチェンジ・オブ・ペースを促し、しなるような弦の弾きで、フロント2管を鼓舞する。グイグイ引っ張るような、チャーネットの骨太なベースの音がとても印象的。

ネットでもジャズ盤紹介本でも全く話題に上がらない盤ではあるが、内容は濃い。純ジャズ復古後のネオ・ハードバップとして、真摯でストイックな内容のアフロ・ジャズである。モフェット・ファミリーの演奏能力は高く、全編に渡って、安心して聴き込むことが出来る。ヴィーナス・レコード独特の個性溢れる録音も良い感じ。隠れ好盤である。
 
 
 
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