大江千里の新作『Letter to NY』
コロナ禍になってから、ジャズの新作の録音環境も厳しい状況になった。録音スタジオ内の環境は基本的に「密」だし、管楽器は息を強く吹き出すので、ツバなどの飛沫が飛びやすい。コロナ禍の初期、音楽の新作の録音作業は全面的にストップした。当然、ライヴ活動も全面的に停止。それでも、昨年の10月以降、徐々に新作が録音されるようになってきたことは喜ばしいことである。
大江千里(おおえせんり)。1960年9月生まれ。1983年にシンガーソングライターとしてデビュー、2007年末までに45枚のシングルと18枚のオリジナルアルバムを発表。我が国を代表するJポップ・ミュージシャンの1人だったが、2008年以降、国内での音楽活動を休止し、ニューヨークに在住。2012年にジャズ・ピアニストに転身。そして今年、ジャズ・ピアニストに転身後の7枚目のリーダー作をリリースした。
大江千里『Letter to N.Y.』(写真左)。2021年7月のリリース。全曲ニューヨークの自宅でのセルフレコーディング。コロナ禍の中での新作の制作について、大江は自宅での巣籠レコーディングを敢行。全て大江一人の演奏と録音により完成させたトラックを日本に持ち込んでミックス&マスタリング作業を行い、アルバムを完成させている。
収録曲は全10曲。エレ楽器を織り交ぜた、コンテンポラリーなフュージョン・ジャズな雰囲気を色濃く宿した楽曲ばかり。どの曲もキャッチャーで印象的な主題を持っていて、こういうところに、元シンガーソングライターの才能が活かされている様に感じる。音の重ね方、リズムの割り振り方にも、ただならぬ「センス」感じる。肩肘張らずにリラックスして聴き進めることが出来る魅力盤である。
セルフ・インストルメンタルな打ち込みの音楽であり、サンプリング志向の作品ではあるが、リズム&ビートと音の展開はしっかりとジャズしている。ユッタリとしたスインギーな曲あり、静的なスピリチュアルな曲あり、ライトでエレ・ファンクな曲あり、日本人の「大江千里」ならではのコンテンポラリーなフュージョン・ジャズが、なかなかに「格好良い」。
大江千里のジャズの「新境地」となるか、という強い期待感を持たせてくれる、なかなかにユニークな新盤である。「大江千里の考えるフュージョン・ジャズ」のサンプルがこの盤に詰まっている様に感じている。次作は、現代フュージョン系のミュージシャンを集めて、この「新境地」の延長線上にある新作を聴かせて欲しい。僕はこの「大江千里の考えるフュージョン・ジャズ」の音世界、お気に入りです。
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