バップ・ドラミングの伸びしろ
Joe Farnsworth(ジョー・ファンズワース)。1968年、米国マサチューセッツ州生まれのジャズ・ドラマーである。10歳の頃からドラムを習い始め、大学在学時に出会ったエリック・アレキサンダーとは頻繁に共演している。それから、ベニー・ゴルソン、ファラオ・サンダース、ハロルド・メイバーンのリーダー作に参加しているのを聴いている。
僕は、このアレキサンダーのリーダー作で、ファンズワースの名前を知った。明らかに伝統的なバップ・ドラミングだが、変幻自在、硬軟自在、緩急自在な、新しい響きのするドラミングで、伝統的なバップ・ドラミングの可能性について、認識を改めた思い出がある。
堅実でシンプルなドラミングである。ファンズワースのドラム・セットを写真で見たことがあるが、至ってシンプルな構成。数多くのシンバル類やタムタムを使用するドラマーも多々いて、音の変化やスピード感を、セット数の多さでカヴァーしている。しかし、ファンズワースはこのシンプルなセットで、変幻自在、硬軟自在、緩急自在なドラミングを披露する。相当高度なテクニックの持ち主である。
Joe Farnsworth『Time to Swing』(写真左)。2019年12月17日の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farnsworth (ds), Kenny Barron (p), Peter Washington (b), Wynton Marsalis (tp)。ファンズワースのトリオに、トランペットの巨匠、ウィントン・マルサリスが冒頭の「The Good Shepherd」から、4曲目の「Down by the Riverside」までの4曲にのみに客演する編成。
ファンズワースのトラミングは伝統的なバップ・ドラミング。伝統的な響きで実に味のあるドラミング。伝統的なドラミングであるが、その変幻自在、硬軟自在、緩急自在なドラミングは見事の一言。こうやってファンズワースのドラミングを聴くと、モダン・ジャズのドラミングは「かくあるべし」という気分になる。このドラミングをバックにすると、フロント楽器もさぞ吹きやすいだろうと強く思うのだ。
そういう観点で聴き耳を立てると、まず、ウィントンのトランペットが実に良い感じで吹きまくっている。もともとサイドマンに回ったウィントンは素晴らしいパフォーマンスを披露する傾向にあるのだが、このファンズワース+バロン+ワシントンのリズム・セクションのバッキングが素晴らしい分、フロント1管のウィントンが実に気持ちよさそうに、トランペットを吹き上げている。この盤でのウィントンは「文句無し」。
で、このバックのリズム・セクションのみとなった5曲以降の演奏を聴くと、これまた、ピアノのバロンとベースのワシントンが気持ちよさそうに弾きまくる。ファンズワースのドラミングがとても伴奏上手であり、「鼓舞」上手なのだ。叩き出すリズム&ビートが、決して他の楽器の邪魔をしない。
このピアノ・トリオの演奏も実に味わい深いものがある。そんな中、やはり、ファンズワースのドラミングに耳がいく。何の変哲も無い「伝統的な」バップ・ドラミングだが、その高い表現力が故、実に新しい響きに感じる。まだまだ可能性のあるバップ・ドラミングの「伸びしろ」。こういう盤の存在、実に頼もしく感じる。
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