ジャズと米国ルーツ音楽の融合
コロナ禍は、ジャズの在り方、ジャズの音作り、ジャズの楽しみ方を大きく変えた。引きこもり需要の中、「鑑賞音楽としてのジャズ」が再評価された。決して、音楽は「不要・不急」では無い。引きこもりの中、リラックスして聴くことの出来る音楽。そんな音楽は、コロナ禍の中では重要なアイテムだ。
そして、ソロ、デュオという少人数での録音が増え(いわゆる「密」を避ける為)、引きこもり時の「自宅でのセルフレコーディング」も目にするようになった。2020年後半から、ジャズはコロナ禍によって、色々な切り口で「変化・進化」している。
Harry Connick, Jr.『Alone With My Faith』(写真左)。2021年3月のリリース。現在の米国のジャズ・シーンにおいて、最も優れた男性ボーカリストの1人、ハリー・コニックJr. がコロナ渦のロックダウンの間、自宅のスタジオに引きこもり、たった一人で制作した新作である。
全編に渡って、アメリカン・ルーツ・ミュージックをベースとした、コンテンポラリーなジャズ・ボーカル集である。冒頭の「Alone With My Faith」は、ファンクネス控えめのソウル・ミュージックな雰囲気。2曲目の「Because He Lives」は、フォーキーで郷愁漂う音世界に、後半ゴスペルが加わる。3曲目「Be Not Afraid」は賛美歌風。
かの有名な「Amazing Grace」が収録され、続く「The Old Rugged Cross」のオルガンの響きは「郷愁」を誘う。古き良きアメリカを彷彿とさせる「愁感と寂寞感」。ハリー・コニックJr. の流麗で切々とした歌唱は、そんなアメリカン・ルーツ・ミュージックの響きを増幅させる。見事な歌唱に思わずしんみり聴き入ってしまう。
単なるアメリカン・ルーツ・ミュージックのカヴァーでは無い、ましてや「懐メロ」でも無い。ジャズ、フォーク、カントリー、ゴスペル、ソウル、ブルース、デキシーランド・ジャズ 等々、そんなアメリカン・ルーツ・ミュージックの音の要素を効果的に融合させて、静的でスピリチュアルなジャズ・ボーカルにまで昇華させている。
僕はこの「アメリカン・ルーツ・ミュージック」の音が大好きで、この盤については「居抜き」で、我がバーチャル音楽喫茶の「ヘビロテ盤」になっている。最後に、ハリー・コニックJr. が本作に込めた思いのコメントを引用しておきます。
「お馴染みの伝統的な曲に加えて、ロックダウン中の私の経験を語る新しい曲を書き、レコーディングしました。私は、私たちの多くと同じように、喜び、悲しみ、疑い、確信、憂鬱、インスピレーションなど、信仰や信仰の欠如が引き出すことのできるすべての感情を感じました。多くの曲がキリスト教の曲であるにもかかわらず、私が願っているのは、これらの曲があらゆる信仰を持つ人々の心に響くことです」。
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