音楽喫茶『松和』の昼下がり・77
エディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)。米国のトランペッター。1970年代初頭、ハービー・ハンコックのワンディシバンドのメンバーとして有名になり、その後、約10年間ほど、ハード・バップ〜クロス・オーバー、ファンクなエレ・ジャズを展開したエディ・ヘンダーソン。そう言えば、僕がジャズを聴き始めた頃、結構、メジャーな存在だった。
エレ・ジャズを展開した後、1990年代までには、メインストリームな純ジャズへ転身。ヘンダーソンのユニークなキャリアは「医学の学位を取得し、精神科医とミュージシャンとして並行してキャリアを積んだ」こと。かなり異色なジャズマンである。そう言えば、ピアニストのデニー・ザイトリンが同じ様なキャリアをしていたなあ。ジャズと精神科医。何か因果関係でもあるのだろうか?
さて、エディ・ヘンダーソンのトランペットは「軽快で流麗」である。音色はアコーステッィクなマイルスに似ている、というか、アコ・マイルスの忠実なフォロワーという印象。テクニック的には、高速フレーズやエモーショナルなハイノートとは全く無縁。ミッドテンポで1音1音をしっかり踏まえて、判り易く聴き取り易いフレーズを吹き上げていく。
Eddie Henderson『Shuffle and Deal』(写真左)。2019年12月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Henderson (tp,flh), Donald Harrison (as), Kenny Barron (p), Gerald Cannon (b), Mike Clark (ds)。リーダーのヘンダーソンのトランペット&フリューゲルホーンと、ドナルド・ハリソンのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。
ヘンダーソンのトランペット&フリューゲルホーンの個性である「軽快で流麗」が十分に活かされた佳作である。とにかく、ヘンダーソンのトランペット&フリューゲルホーンの音色が心地良く、ミッドテンポでフレーズの1音1音をしっかり聴かせる個性が、特にスタンダード曲で威力を発揮している。スタンダード曲の持つキャッチャーで美しい旋律をしっかりくっきり聴かせてくれる。
ハリソンのアルト・サックスも、ヘンダーソンの「個性」を踏まえて「軽快で流麗」なフレーズで寄り添う。ヘンダーソンとのユニゾン&ハーモニーはとても心地良い響き。活き活きしたハリソンのアルト・サックスは明るくて確実で判り易い。ヘンダーソンとのフロント・コンビ、この盤の聴きどころである。
そして、この「軽快で流麗」なフロント2管を支えているのが、ケニー・バロンのピアノが率いるリズム隊。さすが「伴奏上手」なピアニストのバロンである。小粋に軽快にフロント2管を支える。決してフロントの邪魔をしない。それでいて、しっかりとフロントを鼓舞する。そして、このバロンのピアノに呼応して、「軽快で流麗」なリズム&ビートを供給するキャノンのベース、クラークのドラムも素敵だ。
内容的にはライトでポジティヴ、軽快で流麗。聴き易く、聴き心地の良い、聴き応えのあるメインストリームな純ジャズ。肩肘張らず、リラックスして、それぞれの演奏を楽しみながら聴ける、ネオ・ハードバップな好盤です。ジャズ喫茶の昼下がりに流すと、何だか素敵に響くネオ・ハードバップだと思います。
ちなみに、ジャケットの表紙に写っている真っ赤なフェラーリは、ヘンダーソンが45年間、同じ車種を乗換ながら、所有している車。1968年からスタートしたエディのフェラーリ、このジャケットにあるフェラーリはなんと6台目とのこと。お後がよろしいようで(笑)。
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