僕なりのジャズ超名盤研究・8
ミンガス・ミュージック。雰囲気的になんだか難解な印象で、しかもバリバリ硬派な純ジャズ。時々、フリー・ジャズ的な雰囲気も時々不意を突くように入る。不協和音前提のユニゾン&ハーモニーは十八番中の十八番。振り返れば、実にジャズらしいジャズのひとつだと思うんだが、ジャズを聴き始めた頃は、このミンガス・ミュージックは実に「敷居が高い」。
Charles Mingus『Pithecanthropus Erectus』(写真左)。邦題『直立猿人』。1956年1月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Jackie McLean (as), J. R. Monterose (ts), Mal Waldron (p), Willie Jones (ds)。マクリーンのアルト・サックスとモンテローズのテナー・サックスが2管フロントのクインテット編成。ミンガス・ミュージックの最初の成果である。
この盤、ジャズ者初心者向けの名盤紹介に必ずと言って良い位、このタイトルが挙がるのだが、内容的には決して易しく無い。基本的に難解。ジャズの基本である即興演奏とジャズ演奏の自由度の高さ、ジャズの表現力の高さ、に着目したミンガス・ミュージックで、ハードバップが基調であるが、ビッグバンド志向の分厚いバンド・サウンドと自由度の高いアドリブ展開が特徴。
アレンジが優れているのだろう、クインテット編成でビッグバンドの様な分厚い音。不安な気持ちを増幅させる様な不協和音の取り扱い。メンバーそれぞれのアドリブ演奏の自由度が高く、演奏スペースが広い。それでいて、テーマ部は整然とした、強烈に統制が取れたユニゾン&ハーモニー。そして、演奏全体の統制は、骨太でソリッドで強靱なミンガスのベースが執り行う。ミンガスのベースがあってこそ成立する「ミンガス・ミュージック」の極意がこの盤に詰まっている。
ジャズの表現力の高さは「A Foggy Day」で確認出来る。この曲はサンフランシスコのフェリー乗り場に向かうまでの霧の深い日の車のクラクション、警報の音、二日酔いの気怠さ等々、自らが感じた霧深き日の雰囲気を演奏で表現している、とミンガスはジャケ裏のライナーノーツで語る。この「表現力の高さ」は、このクインテット編成のメンバーそれぞれの力量に負うところが多い。それぞれが素晴らしいパフォーマンスを発揮している。
ポップな旋律、キャッチャーなメロディーはほぼ皆無。この盤は硬派で取っ付き難くはあるが、内容的には「良質のハードバップ」演奏が詰まっている。ストイックでその高度な内容はアーティスティックですらある。そういう意味でこの盤、初心者は要注意。ジャズを聴き始めて、即興演奏の妙とアドリブの優劣が判ってから、腰を据えて聴くことをお勧めする。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて 【New】 2021.08.11 更新。
・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』
★ まだまだロックキッズ 【New】 2021.08.11 更新。
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から10年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« ベネット=ガガのデュオ第2弾 | トップページ | ファンクネス溢れるパーラン »
コメント