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2021年9月16日 (木曜日)

飽きの来ない「隠れた」優秀盤

ジャズの世界では、リーダーの活動のピークが過ぎた後も、内容の充実した小粋で「隠れた」優秀盤がリリースされていることが多い。それぞれのジャズマンが持つ演奏テクニックや個性は、年齢を積み重ねても急激に衰えるものでは無いし、逆に、年齢を重ねることによって、歌心や余裕を持ったフレーズの取り回しなど、充実したりする要素もある。

つまり、それぞれのジャズマンのリーダー作については、優秀盤を連発していた、優れたパフォーマンスを出し続けていた「ピーク期」を過ぎても、なかなかの内容を伴った優秀盤をリリースすることは良くあること。。それぞれのジャズマンのパフォーマンスを評価するには、ピーク期だけでは無く、活動期全般を広く見渡すことが大切で、そうでなければ「偏った」評価をしてしまうことだってある、ということ。

Junior Cook『The Place to Be』(写真左)。1988年11月23日の録音。SteepleChaseのSCS-1240番。ちなみにパーソネルは、Junior Cook (ts), Mickey Tucker (p), Wayne Dockery (b), Leroy Williams (ds)。ファンキーで味のある、小粋なテナー・サックス奏者、ジュニア・クックの晩年の「隠れた」優秀盤である。
 

The-place-to-be_junior-cook

 
ジュニア・クックは、黄金時代のホレス・シルバー・クインテットで大活躍した名フロント・コンビの片割れ。以前は「中庸」だの「B級」だのと気軽に揶揄されていたが、そんなことは無い。ファンキーで黒い、ブルース感溢れるテナー・サックスは意外と癖になる。いかにも「ハードバップ時代」らしい、ファンクネス漂うテナーは、いかにもモダン・ジャズらしい響きである。

ピアノ担当のミッキー・タッカーがオリジナル2曲を提供、他は、シダー・ウォルトンやベニー・ゴルソンなどの「渋めのミュージシャンズ・チューン」を選曲している。バックのリズム・セクションが少し懸かり気味なので、やはり、クックのテナーが最大の聴きもの。硬派でストレートな吹きっぷり。硬質でエッジのほどよく立った、切れ味の良い音色。バリバリ吹き進めるアドリブ・パフォーマンスが秀逸。全曲に渡って、クックのテナーが十分に楽しめる。

何も先進的、先鋭的なテナーだけ全てではない。こういうハードバップなブロウを極めた様な、聴き応えのあるジャジーなテナーも評価に値する。こういうテナーは意外と飽きが来ない。長く聴き続けることの出来る「隠れた」優秀盤。スティープルチェイス・レーベル、良い仕事してますね〜。
 
 
 
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