タイナー独自の音世界の確立
1970年代、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)はジャズ界のヒーローだった。1960年代、伝説のジョン・コルトレーンのカルテットのピアノ担当として知名度が増し、コルトレーン亡き後、コルトレーン・ミュージックの正統な継承者として、タイナーはジャズ界の希望であり、指針であった。
確かに、1970年代のタイナーの快進撃は見事であった。しっかりとコルトレーン・ミュージックを継承。フリー&アブストラクトなジャズには傾倒しなかったが、モーダルで、アフリカン・ネイティヴなコルトレーンの音世界をピアノ中心のジャズに置き換えて、1970年代を走り抜けた印象が強い。
McCoy Tyner『The Greeting』(写真)。1978年3月17&18日、米国サンフランシスコの「The Great American Music Hall」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Joe Ford (as, fl), George Adams (ts, ss, fl), Charles Fambrough (b), Woody "Sonship" Theus (ds, bells), Guilherme Franco (conga, berimbau, perc)。
収録曲全5曲を見渡すと、コルトレーンの名曲「Naima」以外、残りの4曲はタイナーの作。この頃のタイナーは、決して、スタンダード曲に頼ることをしない、実に潔く、コルトレーン・ミュージックをメインにしたモード・ジャズを展開していた。この頃のタイナーのピアノは、そのスタイルを完全に確立していて、左手のパーカッシヴな「ハンマー打法」で、ビートの底を揺るぎないものとしつつ、流麗で多弁な右手で、モーダルなフレーズを延々と展開していく。それはそれは見事な「モード・ジャズ」。
テナー・サックスに若きジョージ・アダムスが参加しているのが目を引く。フリー&アブストラクトなブロウを封印し、コルトレーンとは響きが異なった、アダムス独自のアフリカン・ネイティヴなモーダルなフレーズを連発する。そして、コンガやベル、ビリンバウなどのパーカッションが、アフリカン・ネイティヴな響きを増幅する。
このライヴ盤を聴く度に、この時点で、タイナーの音世界が完全に確立されていることが再確認出来る。コルトレーン・ミュージックのアフリカン・ネイティヴな部分を継承し、深化させたタイナー独特のモーダルな音世界。ジャズの起源となるアフリカン・アメリカンの音の原風景を垣間見る様なタイナーの音世界。僕は当時から今まで、このタイナーの音世界が大のお気に入りである。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて 【New】 2021.08.11 更新。
・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』
★ まだまだロックキッズ 【New】 2021.08.11 更新。
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« スタンリー・タレンタインの本質 | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・217 »
コメント