テテの秀作「カタロニアの火」
Tete Montoliu(テテ・モントリュー)。スペインのカタロニア生まれの盲目のピアニスト。1933年3月生まれ。1997年8月に64歳で逝去している。僕がテテを初めて聴いたのは1990年代。紙ジャケ・ブームに乗って、スティープルチェイス・レーベルの名盤が一斉にリリースされた時に、テテのリーダー作を何枚か手に入れた。
テテのピアノにはビックリした。硬質で骨太なタッチ。疾走感溢れる高速フレーズ。ダンディズム溢れるスイング感。圧倒的に優れたテクニック。そして、バラード演奏については透明感溢れる歌心。スペイン出身のピアニストなので、ファンクネスは皆無。切れ味の良い透明感とエッジのほど良く立った硬質なタッチ。こんなピアノは初めて聴いた。とことん欧州的なジャズ・ピアノである。
Tete Montoliu『Catalonian Fire』(写真左)。Steeplechaseレーベルからのリリース。SCS1017番。1974年5月26日、コペンハーゲンの「Rosenberg Studie」での録音。ちなみにパーソネルは、Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert Heath (ds)。テテのteeplechaseレーベルの第一弾。テテのピアノの個性が良く判る、シンプルなトリオ編成である。
アルバムタイトルが「カタロニアの火」。テテのピアノに対する比喩であろう。トリオ演奏であるが故、テテのピアノの個性が良く判る。テクニックはオスカー・ピーターソンに引けを取らない。速いフレーズはバリバリ弾きまくる。バラード曲はダンディズム溢れる歌心。モーダルで陰影のハッキリしたフレーズ表現。左での打鍵は重いが切れ味良くパッキパキに硬質。テテの唯一無二の個性だろう。
特にスタンダード曲の解釈がユニークだ。「Sweet Georgia Fame」「A Nightingale Sang in Berkeley Square」「Falling in Love With Love」「Old Folks」そして「Body and Soul」、それぞれ、米国ハードバップの数ある先達の演奏イメージに全く無い、テテならではの独特の解釈とアレンジがこの盤に詰まっている。聴けば「なるほど」と感心する正統なアレンジで、このアレンジ能力もテテの才能のひとつだと言える。
我が国では人気は芳しく無いが(これが不思議なんだが)、これだけの個性とパフォーマンスを発揮するジャズ・ピアニストはそうそういない。スティープルチェイスの総帥プロデューサー、ニルス・ウィンターに可愛がられ、スティープルチェイスに膨大なアルバムを残しているのは有り難いことである。
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