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2021年9月13日 (月曜日)

アンブロゼッティのテンテット盤

ドイツの名門ジャズ・レーベル、エンヤ・レーベル(Enja Label)。アパレルのバイヤーをしていたドイツの熱心なジャズ・マニア、ホルスト・ウェーバーとミュンヘン大学在学中だったこちらも熱狂的ジャズ・ファン、マティアス・ウィンケルマンによってミュンヘンで1971年に設立されたジャズ・レーベル。

エンヤのカタログを見渡すと、フリー・ジャズ、スピリチュアル・ジャズのアルバムが多くリリースされている。欧州はドイツ出身のジャズ・レーベルなので、とにかく、内容的に硬派でストイックなフリー&スピリチュアル・ジャズな演奏がほとんど。ジャズ者初心者の方が、生半可な気持ちで手を出すと「火傷」するような、シビアな内容のジャズが多い。

Franco Ambrosetti『Tentets』(写真左)。1985年3月13, 14日の録音。エンヤ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Franco Ambrosetti (flh), Lew Soloff, Mike Mossman (tp), Alex Brofsky (french horn), Steve Coleman (as), Mike Brecker (ts), Howard Johnson (bs, tuba), Tommy Flanagan (p), Dave Holland (b), Daniel Humair (ds).。タイトル通り、10人編成の大所帯コンボである。

フランコ・アンブロゼッティは、スイス出身のトランペット&フリューゲルホーン奏者。1941年12月生まれ。録音当時は44歳、ベテランの域に達しつつある、実績バリバリの中堅トランペッター。今年で80歳。1960年代以降は主にイタリアを中心に活動している。
 

Tentets-francoambrosetti

 
アンブロゼッティは、この盤ではフリューゲルホーンに専念している。このアンブロゼッティをリーダーとした10人編成コンボの好パフォーマンスを収めた盤。エンヤ・レーベルからのリリースだが、中身はエンヤ・レーベルで少数派の「メインストリームな純ジャズ」で占められている。エンヤ・レーベルには、こういった「メインストリームな純ジャズ」もあって、どれもが聴き応えのある佳作ばかりである。

名盤請負人+燻し銀なバップ・ピアニストのトミー・フラナガン、明日を担う若きテナーマンのマイケル・ブレッカー、加えて、エモーショナルなコンテンポラリー・トランペッターのルー・ソロフ、モーダルで自由度溢れるテナーのスティーヴ・コールマンらのホーン・セクションを従えた豪華なセッション。このメンバーを見れば、この盤の内容、悪かろうはずが無い。

フランコ・アンブロゼッティのフリューゲルホーンはテクニック優秀、音色とフレーズに癖が無い流麗なもの。決して、前面に出てテクニックをひけらかすことはしない。でも、やっていることは結構高度。聴き応え満点である。アップテンポの4ビート曲、アップテンポでノリの良いサンバ曲、ゴージャスな雰囲気のしっとりとしたバラード曲など、いとも容易く、魅力的なフリューゲルホーンを吹き上げていく。

アンブロゼッティは「スイス出身で欧州を代表するトランペットの巨匠」。マイルス・デイヴィスをしてその「黒さ」を認めさせた、とあるが、確かにこの人のトランペットは欧州らしからぬファンクネスを感じるから不思議な存在だ。それでも、超有名スタンダード曲「枯葉」をユニークなアレンジで解釈するところなどは、まさに「欧州ジャズ的」。隠れた好盤、小粋な好盤として、とても楽しめる内容である。
 
 
 
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