スティープルチェイスらしい盤
スティープルチェイス・レーベルのカタログを眺めていると、米国ジャズで忘れ去られたジャズマンを積極的にチョイスしているのが判る。例えば、ジョー・オーバーニー(Joe Albany)。ジョー・オーバニーとは「パウエルに次ぐ名ピアニスト」とパーカーに言わしめた、将来を嘱望されたバップ・ピアニスト。しかし、ジャズメンの性なのか、例によって1950年〜60年代、重度のヤク中&アル中で刑務所や療養所を行ったり来たり。大した成果も残さず、忘れ去られた存在になってしまった。
Joe Albany & Niels-Henning Ørsted Pedersen『Two's Company...』(写真左)。スティープルチェイスのSCS1019番。1974年2月17日、 デンマークはコペンハーゲンの「Rosenberg Studie」での録音。ちなみにパーソネルは、Joe Albany (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)。忘れ去られたバーチュオーゾ、ジョー・オーバーニーと、デンマーク・ジャズの至宝、骨太ベースのレジェンド、ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセンとのデュオ。
1970年代になって、ようやく更正してカムバックした「ジョー・オーバーニー」を捉えた、好デュオ盤である。ジョー・オーバーニーのピアノはビ・バップ仕込み、パッキパキ硬質なタッチ、ハイテクニックで手数が多く饒舌。インプロビゼーションの展開の中で、ちょっと捻りを入れたようなユニークな音展開が特徴。
ペデルセンのベースが骨太で堅実。ソリッドで硬質なベースラインで、オーバーニーのリズム&ビートに対するケアを軽減させて、オーバーニーに、旋律楽器としてのパフォーマンスに専念させている。このデュオ盤では、オーバーニーは遠慮すること無く、のびのびと自然体で、バップなパフォーマンスを繰り広げている。ペデルセンとの相性も良いみたいで、音がぶつかることも無く、聴いていて心地良い、上質のデュオ演奏が詰まっている。
オーバーニーは、ビ・バップ仕込みなピアノながら、繰り出すフレーズがメロディアスで親しみ易く聴き易いのが特徴なのだが、その特徴がこのデュオ盤でとても良く判る。硬質なタッチに歌心がしっかり入って、結構、ハイテクニックなフレーズを連発するのだが、それが意外と耳に付かない。ファンクネスには全く無縁なピアノだが、ちょっと捻りの効いた適度なスイング感は「癖になる」。
欧州に移住した元米国の優秀なジャズマンをピックアップし、セッションをブッキング、米国ジャズに無い、欧州ジャズ気質な、アーティスティックでメインストリームな純ジャズを記録したスティープルチェイス・レーベルの面目躍如。こういうデュオ盤はスティープルチェイスならでは。よくこの組合せを考えて録音したものだ、と聴く度に感心する。スティープルチェイスの総帥プロデューサー、ニルス・ウインターの慧眼恐るべし、である。
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