ジャズ喫茶で流したい・216
Arthur Blythe(アーサー・ブライス)。自分のジャズ盤のコレクションを確認していて、この人の名前を思い出した。黒人ロフト系のサックス奏者。1970年代〜1980年代に最も輝いたサックス奏者の1人。僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、1970年代後半、メジャーな存在となり、我が国でもジャズ雑誌中心に、ブライスのアルバムが紹介されていたので、ブライスの名前には馴染みがある。
1940年、米国LA生まれ、2017年に鬼籍に入っている。1970年代中期にNYに移住後、ジャック・ディジョネットのSpecial Editionのフロントとして世界的知名度を獲得。初リーダー作は、1977年、アバンギャルド・ジャズ専門レーベルから。以降、2003年まで、年1枚程度のペースでリーダー作をリリースしている。
Arthur Blythe『Lenox Avenue Breakdown』(写真左)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Arthur Blythe (as), James Newton (fl), Bob Stewart (tuba), James "Blood" Ulmer (g), Cecil McBee (b), Jack DeJohnette (ds), Guillermo Franco (perc)。フロント楽器は、ブライスのアルト・サックスをメインに、フルートとチューバが脇を固める。ギターに鬼才ジェームス・ブラッド・ウルマー、ベースにセシル・マクビー、ドラムにジャック・デジョネットの名前が確認できる。
このパーソネルを見ただけで、まず、旧来の純ジャズ系の内容では絶対無い、ということが判る。ギターにウルマーの存在が実に不穏で(笑)、ベース+ドラムのリズム隊はニュー・ジャズな8ビートを叩き出す。音的には、8ビートがメインの、黒人ロフト系の「フュージョン・ファンク」。今の耳で聴いても、ほとんど古さを感じない「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」である。
これが、むっちゃ格好良い。まず、リーダーのブライスのアルト・サックスが弾けまくっている。8ビートに乗って、格好良いクールなフレーズを連発する。そして、ウルマーの妖しげなコード弾きがアバンギャルドな雰囲気を漂わせ、切れ味の良いコンテンポラリーなグルーヴ感を醸し出す。フルートのフランコはエモーショナルで飛翔感溢れる吹き回し、スチュワートのチューバは魅力的な低音フレーズを撒き散らす。
そして、何と言っても、セシル・マクビーのベース、ジャック・デジョネットのドラムによるニュー・ジャズな8ビートが素晴らしく格好良い。特に、デジョネットの叩き出す8ビートには惚れ惚れするほどだ。このリズム隊の8ビートがこの盤の演奏全体の「要」になっている。そして、時々、8ビートから4ビートへリズム・チェンジするのだが、これがまた格好良い。これだけ気持ち良いリズム・チェンジはそうそう無い。
タイトル曲「Lenox Avenue Breakdown」などは、適度な緊張感を伴ったロック系の8ビートなリフが特徴的で、マクビーとデジョネットの叩き出す8ビートなリズム&ビートがジャジーなので、演奏全体の雰囲気はジャズに留まっているが、ほとんど「ロック」と言っても良いユニークな内容が面白い。一方、ラストの「Odessa」は、フリー・ジャズの要素が濃いが、個々のソロは充実の内容。
ジャジーでコンテンポラリーなリズム&ビートと、それに乗った魅力的なアドリブ展開で、この盤は、とても素敵な「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」満載。チューバの低音とギターの妖しげなコードがファンクネスに拍車をかける。ジャズ・ファンクが基調のエレクトリック・ジャズと評価しても良い内容。とにかく「コンテンポラリーな純ジャズ者」にとっては、とっても聴いて楽しい「ブライス盤」である。
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