優れた内容のフリー・ジャズ
フリー・ジャズというのは、無手勝流に、思うがままに演奏する、難解で耳障りなジャズという解釈があるが、それは「レベルの低い」フリー・ジャズだろう。
本来、フリー・ジャズは、従来のジャズの事前の決め事である「短い譜面」すら無い、必要最低限の決め事だけで(誰が先に演奏するかとか、基調となるコードとか)、即興演奏を展開するもの。メンバーそれぞれは、先行する楽器の即興演奏を聴いて、それに反応した即興演奏を返す。ユニゾン&ハーモニーをするのも、個々がソロを展開するのも、メンバーそれぞれの「あうんの呼吸」で対応する。
このフリー・ジャズというのは、ジャズの基本となる演奏知識、演奏内容、演奏技術に長けている必要があって、もともとフリー・ジャズというのは、優れたジャズマンだけが演奏出来るフォーマットである。そもそも、無手勝流に、思うがままに演奏するものでは無い。いわんや「難解で耳触り」なものでは決して無い。
ただ、ハードバップ期の4ビートなジャズだけが「ジャズ」だ、とするならば、このフリー・ジャズは、いかに高度な即興演奏であっても「ジャズ」では無いのだろうなあ。でも、優れた内容のフリー・ジャズも立派な「即興演奏を旨とするジャズ」である。
佐藤允彦『Trinity』(写真)。Enjaレーベルの2008番。1971年11月3日、ドイツはミュンヘンの「Studio 70」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Masahiko Sato(佐藤允彦)(p), Peter Warren (b), Pierre Favre (ds, perc)。Enjaレーベルの総帥プロデューサーのホルスト・ウェーバーの招きでミュンヘンに渡った佐藤のライヴ・パフォーマンスである。
出だしから、切れ味の良い、間を活かしたフリーなジャズが展開される。それぞれの楽器はとても良く鳴っていて、耳にしっかりとした印象を残してくれる。3人の相性はとても良かったみたいで、佐藤のピアノがリードする旋律イメージを、ベースとドラム、それぞれが、的確に、時にはイメージを膨らませて応対する。限りなくフリーな演奏ではあるが、基本は「とても自由度の高いモーダルな演奏」。
フリー・ジャズの好例がこの盤に詰まっている。スタンダード曲中心の4ビートなジャズからすると難解には違いないが、クラシックのバルトーク辺りや、優れた内容の現代音楽をイメージすれば、決して難解な内容では無い。ジャズ者初心者の方々にはお勧めしないが、ジャズを聴くことが趣味となったジャズ者中堅の方々には一聴をお勧めしている。この優れた内容のフリー・ジャズには「良質な即興演奏の妙」がてんこ盛りである。
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