90年代のブレイのソロ・ピアノ 『Sweet Time』
Paul Bley(ポール・ブレイ)。久しく、このピアニストの名前を忘れていた。基本は「余白」を活かしたリリカルで耽美的なピアノであるが、アドリブ部は突如フリーキーに展開し、アブストラクトにブレイクダウンする。この「落差」が堪らない。このダイナミックな展開が「即興演奏の魅力」であり、ジャズの「創造力の魅力」であると思うのだ。
Paul Bley『Sweet Time』(写真左)。1993年8月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (p)。ポール・ブレイのソロ・ピアノ盤になる。ポール・ブレイのソロ・ピアノ盤と言えば『Open, to Love』(ECM・1972)が頭に浮かぶが、基本的な部分は変わっていないが、ECM盤に漂う「小難しさ」は無く、ブレイの個性がシンプルに判り易いソロ・ピアノになっている。
ポール・ブレイは、カナダ・モントリオール出身のピアニスト。1960年代はフリー・ジャズがメイン。高いテクニックで、フリーキーにアブストラクトに展開するパフォーマンスは圧巻。ではあるが、とにかく「難解」。フリー・ジャズの好きなジャズ者の方々には必須アイテムではあるが、通常のジャズ者の方々にはかなりの「重荷」になる音世界である。
さて、このライブ盤『Sweet Time』であるが、ECM時代の「気難しい」ところは全く無く、どこか「スッキリ」していて、ブレイのピアノの特徴である「美しくリリカルな」ものと、その合間に「激しいアブストラクトなブレイクダウン」と「思索的で静的なフリー・ジャズ」の交錯がとても良く判る。1980年代くらいまでの「強い毒気や静的な熱気」は影を潜めてはいるが、「美しくリリカル、突然フリーキー」という唐突さ、不思議な雰囲気はしっかり維持されている。
優れたバラード演奏がてんこ盛りなのもこの盤の魅力で、冒頭の「Never Again」、3曲目「Turnham Bay」、5曲目「Lost Love」、8曲目の「Started」、続く9曲目の「As Beautiful As the Moon」など、クールな浮遊感を伴ったリリカルで耽美的な、そして、時々フリーキーなバラード演奏は筆舌に尽くしがたい。崩れそうで崩れないが、時々ブレイクダウンして唐突に疾走するブレイのバラード演奏。即興演奏の極みである。
ブレイのソロ・ピアノって、基本的な部分は、1972年の初ソロ・ピアノ盤『Open, to Love』と変わっていない。この『Open, to Love』から「気難しい」表現を差し引いて、リリカルで耽美的な表現を前面に押し出したものが、この『Sweet Time』になるのかな。フリーな表現も結構入るので、単なる「美しい」ピアノ・ソロ盤では無い。ジャズ者初心者の方は気をつけていただきたい。
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