僕なりのジャズ超名盤研究・2
「僕なりの超名盤研究」の第2回目。今日は「Charlie Parker(チャーリー・パーカー)」。ビ・バップの祖の一人とされる。破滅型ジャズマンの典型的な例として、よくその名が挙げられる。が、パーカーの天才的パフォーマンスと破滅型の生き方とは全く因果関係が無い。純粋に、パーカーはジャズのアルト・サックス奏者として、その才能は突出していて、彼のアドリブ・パフォーマンスは他の追従を許さない。いわゆる「希有なジャズ演奏家」の一人である。
僕がジャズを聴き始めた頃、ジャズ入門書については、とにかく「パーカーを聴け、パウエルを聴け、コルトレーンを聴け」だった。特に、パーカーを聴かないと、パーカーを理解出来ないとジャズは理解出来ない、などという極論が横行していた時代で、ジャズを聴き始めた頃、とにかくパーカーを聴かないと、という強迫観念があった(笑)。
Charlie Parker『The Genius Of Charlie Parker, #3 - Now's The Time』(写真左)。1952年から53年にかけての録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Al Haig (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)。チャーリー・パーカーのアルト・サックス1管がフロントの「ワン・ホーン・カルテット」編成。パーカー最晩年の録音で、この盤の録音の2年後、1955年に心不全でパーカーは逝去する。
僕はジャズ者初心者の頃、ジャズ入門書でお勧めされていたのが、ダイヤル・セッションやサヴォイ・セッションのコンプリート盤で、これにはアルバム収録に採用されたテイク以外に、別テイクや失敗テイクなどがごった煮で入っていて、それらを全て聴かないと、理解出来ないと駄目、なんていう評論が多かった。でも、ジャズ者初心者で、別テイクや失敗テイクを聴く意味など判る訳も無く、ほとんど修行僧の趣で、我慢して拝聴すること強いられていた。
実は、この盤、僕がパーカーを初めて聴いたアルバムで、この盤で良かったなあ、と今でも思っている。ダイヤル・セッションやサヴォイ・セッションのコンプリート盤から入っていたら、パーカーの演奏に親しみを持って聴くことが出来る時期は、相当、後になっていたような気がする。また、パーカーが活躍した最盛期は1940年代後半。まだまだ録音技術は低く、音が良くない。音が良くない盤で、パーカーのパフォーマンスの素晴らしさを聴き取るのは、ジャズ者初心者の耳にはハードルが高かった。
そういう意味で、この『Now's The Time』というVerveレーベル盤は、1952年から53年の録音なので、まずまず音が良い。録音が良いので、この盤を聴き直して気付くのは、パーカーの吹くアルト・サックスって、とびきり楽器が凄く良く鳴っているということ。パーカーの演奏テクニックについては評価が高いのだが、テクニック以前に、パーカーの楽器の吹き方、鳴らし方が素晴らしい。このパーカーのアルト・サックスの吹き方、鳴らし方は、歴代のジャズマンの中で、今でも飛び抜けて素晴らしい。
この『Now's The Time』には、「Kim」「Cosmic Rays」「Chi Chi」の別テイクが収録されている。しかし、この別テイクの選び方が秀逸で、アレンジの違い、アドリブ展開の違い、吹き方や表現の違い、本テイクと別テイクを聴き比べることによって、そんな「ジャズの即興演奏の妙」が良く判るのだ。こういう形でのテイク違いの収録は、ジャズ者初心者にとってもその意味が良く判る。
録音の良さ、別テイクの収録の工夫、この盤は、その2点で僕にとっての「パーカーのイチ推し盤」となっている。1952年から53年という、ハードバップ初期に差し掛かる時期の「充実し成熟した演奏テクニック」を基にした流麗で熱い演奏で「ビ・バップ」を唄い上げていく。この盤を聴くことによって、何となく雰囲気で「ビ・バップ」が理解出来ると思う。初めはそれで良い。それから長年、ジャズを聴き続けて、ジャズ理論の勉強を進めるうちに理屈は後からついてくる。
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