« 僕なりのジャズ超名盤研究・1 | トップページ | 僕なりのジャズ超名盤研究・3 『Surf Ride』 »

2021年8月16日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・2

「僕なりの超名盤研究」の第2回目。今日は「Charlie Parker(チャーリー・パーカー)」。ビ・バップの祖の一人とされる。破滅型ジャズマンの典型的な例として、よくその名が挙げられる。が、パーカーの天才的パフォーマンスと破滅型の生き方とは全く因果関係が無い。純粋に、パーカーはジャズのアルト・サックス奏者として、その才能は突出していて、彼のアドリブ・パフォーマンスは他の追従を許さない。いわゆる「希有なジャズ演奏家」の一人である。

僕がジャズを聴き始めた頃、ジャズ入門書については、とにかく「パーカーを聴け、パウエルを聴け、コルトレーンを聴け」だった。特に、パーカーを聴かないと、パーカーを理解出来ないとジャズは理解出来ない、などという極論が横行していた時代で、ジャズを聴き始めた頃、とにかくパーカーを聴かないと、という強迫観念があった(笑)。

Charlie Parker『The Genius Of Charlie Parker, #3 - Now's The Time』(写真左)。1952年から53年にかけての録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Al Haig (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)。チャーリー・パーカーのアルト・サックス1管がフロントの「ワン・ホーン・カルテット」編成。パーカー最晩年の録音で、この盤の録音の2年後、1955年に心不全でパーカーは逝去する。

僕はジャズ者初心者の頃、ジャズ入門書でお勧めされていたのが、ダイヤル・セッションやサヴォイ・セッションのコンプリート盤で、これにはアルバム収録に採用されたテイク以外に、別テイクや失敗テイクなどがごった煮で入っていて、それらを全て聴かないと、理解出来ないと駄目、なんていう評論が多かった。でも、ジャズ者初心者で、別テイクや失敗テイクを聴く意味など判る訳も無く、ほとんど修行僧の趣で、我慢して拝聴すること強いられていた。
 

Thegeniusofcharlieparker3

 
実は、この盤、僕がパーカーを初めて聴いたアルバムで、この盤で良かったなあ、と今でも思っている。ダイヤル・セッションやサヴォイ・セッションのコンプリート盤から入っていたら、パーカーの演奏に親しみを持って聴くことが出来る時期は、相当、後になっていたような気がする。また、パーカーが活躍した最盛期は1940年代後半。まだまだ録音技術は低く、音が良くない。音が良くない盤で、パーカーのパフォーマンスの素晴らしさを聴き取るのは、ジャズ者初心者の耳にはハードルが高かった。

そういう意味で、この『Now's The Time』というVerveレーベル盤は、1952年から53年の録音なので、まずまず音が良い。録音が良いので、この盤を聴き直して気付くのは、パーカーの吹くアルト・サックスって、とびきり楽器が凄く良く鳴っているということ。パーカーの演奏テクニックについては評価が高いのだが、テクニック以前に、パーカーの楽器の吹き方、鳴らし方が素晴らしい。このパーカーのアルト・サックスの吹き方、鳴らし方は、歴代のジャズマンの中で、今でも飛び抜けて素晴らしい。

この『Now's The Time』には、「Kim」「Cosmic Rays」「Chi Chi」の別テイクが収録されている。しかし、この別テイクの選び方が秀逸で、アレンジの違い、アドリブ展開の違い、吹き方や表現の違い、本テイクと別テイクを聴き比べることによって、そんな「ジャズの即興演奏の妙」が良く判るのだ。こういう形でのテイク違いの収録は、ジャズ者初心者にとってもその意味が良く判る。

録音の良さ、別テイクの収録の工夫、この盤は、その2点で僕にとっての「パーカーのイチ推し盤」となっている。1952年から53年という、ハードバップ初期に差し掛かる時期の「充実し成熟した演奏テクニック」を基にした流麗で熱い演奏で「ビ・バップ」を唄い上げていく。この盤を聴くことによって、何となく雰囲気で「ビ・バップ」が理解出来ると思う。初めはそれで良い。それから長年、ジャズを聴き続けて、ジャズ理論の勉強を進めるうちに理屈は後からついてくる。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

« 僕なりのジャズ超名盤研究・1 | トップページ | 僕なりのジャズ超名盤研究・3 『Surf Ride』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 僕なりのジャズ超名盤研究・1 | トップページ | 僕なりのジャズ超名盤研究・3 『Surf Ride』 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー