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2021年8月10日 (火曜日)

ケニー・ワーナーのソロ・ピアノ

このところ、酷暑の日が続くわ、台風は来るわ、で、エアコンの効いた部屋の中で、大人しく、シンプルで聴き心地の良いソロ・ピアノ盤を好んで聴いている。ソロ・ピアノというのは、そのジャズ・ピアニストの個性と志向がとても良く判る。そのピアニストの持つテクニックのレベルも判るし、今までに体験してきた音楽のトレンドも良く判る。

ケニー・ワーナー(Kenny Wener)。1951年11月、米ブルックリン生まれのジャズ・ピアニスト&コンポーザー。高校在学中からマンハッタン音楽大学のコースに参加、クラシックへの思いを深める。その後、ジャズへ転向。1970年にバークレー音楽大学へ編入。以降、多数の一流ミュージシャンと共演。また、盟友ジョー・ロヴァーノとのアルバムでも好演が聴ける。現在、NY在住で活動中。

Kenny Werner『Solo In Stuttgart』(写真左)。1992年6月10日、独シュトゥットガルトのSDR(Süddeutscher Rundfunk)のスタジオホールでの録音。ケニー・ワーナーのソロ・ピアノ盤。ケニー・ワーナーがシュトゥットガルト公演に臨んだ1992年は、ソロ・ピアノのパフォーマンスを追求し始めた頃。恐らく、ワーナーの初ソロ・ピアノ盤だと思う。
 

Solo-in-stuttgart

 
収録曲は「Dolphin Dance」「Lorraine My Sweet」「Blue in Green」「All the Things You Are」「Anniversary Waltz」「In Your Own Sweet Way」と、「グレイト・アメリカン・ソングブック(アメリカン・スタンダーズ)」をベースにしたもの。ソロ・パフォーマンスと相まって、ワーナーのピアノの個性と志向がとても良く判る。

テクニックはとびきり優秀。高速パッセージも難なくこなす。破綻や揺らぎは全く無い。リズム&ビートは仄かにアーシーではあるが、ファンクネスは希薄。欧州ジャズ系のピアノの響きである。タッチがやや骨太ではあるが、耽美的でリリカルな表現も上々で、エレガンス漂う洗練されたもの。尖った繊細さは無い。アブストラクトな表現も控えめではあるが素性確かなもの。

我が国ではあまり馴染みの無いピアニストではあるが、このソロ盤を聴く限り、本場NYで評価が高く、多くのジャズマンからの共演オファーを受けているのも頷ける。特にアメリカン・スタンダーズ曲における、その親しみやすいメロディに乗せたクリエイティヴなパフォーマンスは素晴らしいの一言。このケニー・ワーナーというピアニスト、もっと他のリーダー作を聴いてみたくなった。
 
 
 
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