変わった素性のピアノ・ソロ盤
とても変わった素性のピアノ・ソロ盤もある。音を聴けば、明らかにキース・ジャレットなんだが、タッチが少し違う。ピアノのタッチが重き霧クラシック寄りなのだ。しっかり堅実、端正に鍵盤を叩き、押し込む。昔、社会人になりたての頃、「秘密の喫茶店」で、ママさんにブラインド・テストみたいに聴かされた盤なんだが、しばらく忘れていた。
Dennis Russell Davies『Keith Jarrett / Ritual』(写真)。1977年6月の録音。1982年、ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Dennis Russell Davies (p)。デニス・ラッセル・デイヴィスのソロ・ピアノ盤。
デニス・ラッセル・デイヴィスは米国ジュリアード音楽院出身のクラシックの指揮者。ピアニストでもある。本業は指揮者、ピアニストは副業の位置づけだが、クラシック・ピアニストとしても十分に認められているらしい。 1944年生まれなので、このソロ盤の録音時は、まだ33歳。若きクラシックの有望株である。
改めて、この盤、キース・ジャレット作曲のピアノ・ソロ曲を、デニス・ラッセル・デイヴィスがピアノで弾く、という、ちょっと変わったソロ・ピアノ盤である。くどいようだが、キースは作曲のみで、演奏はしていない。
さすがに、キース・ジャレットの作曲なので、演奏のそこかしこに「キース節」が散りばめられている。演奏を聴いていると、演奏の構成自体は、キースのソロ・パフォーマンスと同様で、キースのソロ・ピアノの即興演奏をそのまま、楽譜に落とした様な趣である。しかし、しばらく聴いていて「これってキースやん」って判る位なので、キースの紡ぎ出すフレーズって、思いっ切り個性的なんだなあ、と改めて感心する。
デニス・ラッセル・デイヴィスのピアニストとしての個性はほぼ無い。キースと比較すると、キースより、ピアノ・タッチがしっかり堅実、端正に鍵盤を叩き、押し込んでいる。高音域の切れ味についてはキースの方が先鋭的。アブストラクトにフリーに即興演奏として自由度を追求することは無い。あくまで基本はクラシック・ピアノ。キースの譜面通りに弾き進めている様子が強く感じられる。
このピアノ・ソロ盤の中にあるのは、キース独特の手癖やフレーズ、音のカラーや重ね方で、そういう意味では、デニス・ラッセル・デイヴィスのクラシックのピアニストとしての技術は相当高いものが有るように思う。
しかし、ユニークなソロ・ピアノ盤である。ネット上でのアルバム評を見ていると、この盤をキースのソロ・ピアノ盤と勘違いしている向きもある。まあ、無理も無いですね。でも、確かに、このピアノ・ソロ盤、キースのソロ・パフォーマンスの代わりとしても楽しめる内容になっています。
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