ECMお抱えベーシストの秀作
欧州ジャズは、米国ジャズと全く異なる音作り、全く異なる進化を遂げ、21世紀に入っては、更なる深化が進んでいる。一番顕著な例が「ECMレーベル」の存在。ECMレーベルは、米国ジャズの影響を殆ど受けず、どちらかと言えば、北欧ジャズ、独ジャズの影響を参考にしつつ、即興演奏を前面に押し出した、独自の「ニュー・ジャズ」という音世界を創造していった。
Eberhard Weber『The Following Morning』(写真)。1976年8月の録音。ECMの1084番。ちなみにパーソネルは、Eberhard Weber (b), Rainer Brüninghaus (p, key), Oslo Philharmonic Orchestra (cello, French-horn, oboe)。ECMレーベルお抱えのベーシスト、エバーハルト・ウェーバーの3枚目のリーダー作になる。ジャケットは、ウェーバーの奥様マヤさんのペインティング。この盤の音世界をよく表している。
リーダーのベーシスト、エバーハルト・ウェーバーが我が国で話題になることは殆ど無かった様に思う。単にコマーシャルなジャズマンでは無かったので、我が国のレコード会社、ジャズ評論家が取り扱わなかっただけだろう。ウェーバー自身は優秀なベーシストであり、現代音楽をベースとした即興芸術としてのジャズの優秀な作曲家でもある。この盤以外にも、優れたリーダー作やサイドマンとして参加した音源を沢山残している。
構成楽器はベースとピアノ、キーボード、そして、チェロ、フレンチホルン、オーボエの3種のクラシック楽器のみ。打楽器を外したこのシンプルな構成で、この盤の様に「幽玄でフォーキーで耽美的、時折フリーキー」な音世界を創り出している。シンプルな構成ながら、音の厚み、広がりが効果的。間と音の広がりを上手く調和させた音世界は、まさに「現代音楽をベースとした即興芸術としてのジャズ」である。
調性と無調を効果的にミックスさせた即興演奏は傾聴に値する。「調性部分」の旋律は主にウェーバーのベースがソロ弾きで担当する。ピアノ、キーボードは優れた伴奏とサポートを提供し、ウェーバーのベースとのユニゾン&ハーモニーは耽美的でリリカル。そして、チェロ、フレンチホルン、オーボエの3種のクラシック楽器が「音の厚みと広がり」を創り出すのに貢献している。
従来のジャズと呼ぶにはビート感が希薄で優しく柔らかい。クラシックと呼ぶには、即興性が高く、あまりにモダン。ポップスと呼ぶには妖しく幽玄。当時は「ニュー・ジャズ」と呼ばれたが、今の耳には、洗練されたフュージョン(融合)・ミュージックに響く。即興性が高く、アブストラクトな面も垣間見え、現代の「静的なスピリチュアル・ジャズ」として、再評価しても良い内容である。
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