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2021年7月10日 (土曜日)

モーダルなJM 『A Night in Tunisia』

伝説のジャズ・ドラマー、アート・ブレイキー率いる「ジャズ・メッセンジャーズ」。数々の有望な若手ジャズマンの登竜門的バンドで、ブレイキーにスカウトされ、このバンドで活躍したジャズマンは、このバンドを離れた後、ほとんどのジャズマンがジャズ・シーンの中核を担う存在になっていった。

Art Blakey and The Jazz Messengers『A Night in Tunisia』(写真)。1960年8月の録音。ブルーノートの4049番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。鯔背なトランペッター、モーガンと、モーダルなテナー・タイタン、ショーターとの2管フロント。クインテット編成になる。

あのファンキー・ジャズの大名盤『Moanin'』から、メンバーはテナー・サックス担当 & バンドの音楽監督のベニー・ゴルソンから、ウェイン・ショーターに代わっただけ。しかし、前作『The Big Beat』で、テナー・サックスがショーターに代わった途端、ジャズ・メッセンジャーズの音はガラリと変わる。明らかに「モード」の雰囲気が色濃くなっていた。
 

A-night-in-tunisia

 
そして、この『A Night in Tunisia』である。タイトル曲はビ・バップ時代の名曲。しかし、演奏内容は明らかに「モード」。この盤から、ショーターはバンドの音楽監督としての役割を100%果たし始めた。ファンキー・ジャズ一色だったメッセンジャーズを一気に「モード色」に塗り替えたのだ。ショーターのテナー・サックスは徹頭徹尾「モーダルな」フレーズで埋め尽くされている。

で、他のメンバーである。スタジオ録音2作前にはコッテコテのファンキー・ジャズをやっていたメンバーである。モードに適応せず、バンドを離れて行くのかと思いきや、意外や意外、コッテコテのファンキー・ピアノのティモンズも窮屈そうだが、モーガン、メリット、皆、モードに填まっている。もとより、リーダーのブレイキー御大がモーダルな演奏を牽引している。いやはや、凄いポテンシャルを持ったバンドである。

モードって何、と聞かれたら、この盤と『Moanin'』を聴き比べてもらうのが一番かな。それほど、このアルバムはモード・ジャズの音が詰まっていて、その響きは独特なもの。ショーターが音楽監督として、バンドに持ち込んだ「モード・ジャズ」。ショーターがマイルス・バンドに引き抜かれた後も、1960年代のメッセンジャーズの音として定着していくのだ。
 
 
 
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