モーダルなJM 『A Night in Tunisia』
伝説のジャズ・ドラマー、アート・ブレイキー率いる「ジャズ・メッセンジャーズ」。数々の有望な若手ジャズマンの登竜門的バンドで、ブレイキーにスカウトされ、このバンドで活躍したジャズマンは、このバンドを離れた後、ほとんどのジャズマンがジャズ・シーンの中核を担う存在になっていった。
Art Blakey and The Jazz Messengers『A Night in Tunisia』(写真)。1960年8月の録音。ブルーノートの4049番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。鯔背なトランペッター、モーガンと、モーダルなテナー・タイタン、ショーターとの2管フロント。クインテット編成になる。
あのファンキー・ジャズの大名盤『Moanin'』から、メンバーはテナー・サックス担当 & バンドの音楽監督のベニー・ゴルソンから、ウェイン・ショーターに代わっただけ。しかし、前作『The Big Beat』で、テナー・サックスがショーターに代わった途端、ジャズ・メッセンジャーズの音はガラリと変わる。明らかに「モード」の雰囲気が色濃くなっていた。
そして、この『A Night in Tunisia』である。タイトル曲はビ・バップ時代の名曲。しかし、演奏内容は明らかに「モード」。この盤から、ショーターはバンドの音楽監督としての役割を100%果たし始めた。ファンキー・ジャズ一色だったメッセンジャーズを一気に「モード色」に塗り替えたのだ。ショーターのテナー・サックスは徹頭徹尾「モーダルな」フレーズで埋め尽くされている。
で、他のメンバーである。スタジオ録音2作前にはコッテコテのファンキー・ジャズをやっていたメンバーである。モードに適応せず、バンドを離れて行くのかと思いきや、意外や意外、コッテコテのファンキー・ピアノのティモンズも窮屈そうだが、モーガン、メリット、皆、モードに填まっている。もとより、リーダーのブレイキー御大がモーダルな演奏を牽引している。いやはや、凄いポテンシャルを持ったバンドである。
モードって何、と聞かれたら、この盤と『Moanin'』を聴き比べてもらうのが一番かな。それほど、このアルバムはモード・ジャズの音が詰まっていて、その響きは独特なもの。ショーターが音楽監督として、バンドに持ち込んだ「モード・ジャズ」。ショーターがマイルス・バンドに引き抜かれた後も、1960年代のメッセンジャーズの音として定着していくのだ。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
★ AORの風に吹かれて 【更新しました】 2021.06.10 更新。
★ まだまだロックキッズ 【更新しました】 2021.06.10 更新。
★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から10年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« 「小粋なジャズ」を聴き直す。 | トップページ | 「One For All」というグループ »
コメント