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2021年7月12日 (月曜日)

ビル・ハードマンの初リーダー作

サヴォイ・レーベルのカタログを見渡していると、有名な一流ジャズマンの名前も多々あるが、その中に、地味な存在ではあるが、個性的なパフォーマンスを繰り広げる「山椒は小粒でもピリリと辛い」的ジャズマンの名前が結構、確認出来る。中には「これ誰?」という名前もあるが、当時、サヴォイ・レーベルはR&Bのレコードの好セールスに支えられていて、このR&B系のメンバーの名前なんだろう。これは仕方が無い。

Bill Hardman『Saying Something』(写真左)。1961年10月18日、ニューアークのMedallion Studiosでの録音。プロデューサーはTom Wilson。ちなみにパーソネルは、Bill Hardman(tp), Sonny Red(as), Ronnie Mathews(p), Doug Watkins(b), or Bob Cunningham(b), Jimmy Cobb(ds)。リーダーのハードマンのトランペットとレッドのアルト・サックスの2管フロントのクインテット編成。ベースは2人で分担している。

パーソネルを見渡すと、メンバー全員、地味な存在ではあるが、個性的なパフォーマンスを繰り広げる「山椒は小粒でもピリリと辛い」的ジャズマンである。人気の一流ジャズマンの名前は1人としていない。しかも、プロデューサーについては、有名敏腕プロデューサーのオジー・カディナが去って、トム・ウィルソン。これだけの事前情報を見れば、この盤の内容にはあまり期待出来ないな、と思いつつ、CDプレイヤーの再生スイッチを押す。
 

Saying-something

 
出てくる音は、とてもしっかりした骨太なハードバップな音。録音もルディ・バン・ゲルダーでは無いのだが、とてもジャズを感じる素敵な録音である。どの楽器もしっかり鳴って、アドリブ・フレーズには揺らぎも無い。キラキラ輝かんばかりのポジティヴな音で、アドリブ・フレーズが展開される。1961年は「ジャズの多様化」真っ只中。それでも、この盤にはハードバップ真っ只中、1950年代半ばの音がグッと詰まっている。

リーダーのビル・ハードマンは、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズで、マクリーンやグリフィンと絶妙なコンビネーションを演じたトランペット奏者。翳りの無い、明るくブリリアントでスッと抜ける、真っ直ぐなトランペットが個性。翳りが無い分、脳天気な感じが付きまといますが、この明るいトランペットは聴いていて「元気が出る」。トランペットはこうでなくっちゃ、と改めて思わせてくれるポジティヴなブロウが魅力的。

この盤、ビル・ハードマンの初リーダー作なんですね。それまでは、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズのフロント管を担っていたからなあ。ジャジーでハードバップど真ん中な良い音を出すトランペッターで、リーダー作に恵まれなかったこと、人気盤のサイドマンにも恵まれなかったことが実に残念に思います。
 
 
 
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