「進取の気性」のマクリーン
ブルーノートの1500番台から、4000〜4300番台については、ハードバップ期からメインストリーム・ジャズの衰退期まで、カタログに挙がったアルバムを聴き進めるだけで、ジャズの歴史、ジャズの演奏スタイルの変遷が良く判る、と言われる。確かに、ブルーノートのアルバムは「売り上げ」よりも、売り上げを度外視した「ジャズの芸術としての側面」を記録し続けている。
Jackie Mclean『Jackie's Bag』(写真左)。ブルーノートの4051番。1959年1月18日、1960年9月1日の録音。ちなみにパーソネルは、1959年1月18日の録音、Track1-3について、Jackie McLean (as), Donald Byrd (tp), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。1960年9月1日の録音、Track4-6について、Jackie McLean (as), Tina Brooks (ts), Blue Mitchell (tp), Kenny Drew (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。
マクリーンのプレステッジからブルーノートに移籍した初リーダー・セッションの記録。全く異なる編成で、LP時代のA面とB面を分け合っている。しかし、それぞれのパーソネルを見ると、とりわけハードバップ期と変わった、新しいトレンドを担うメンバーが入っている訳では無い。この異なる編成の、異なる録音時期のセッションをひとつのアルバムに収録した、アルフレッド・ライオンの意図が最初は全く判らなかった。
1959年1月18日の録音、冒頭の「Quadrangle」を聴くと面白い。マクリーンは、既に、当時の新しいジャズの演奏トレンドに対峙した、フリー・ジャズ的なフレーズにチャレンジしている様子が窺えるが、他のメンバーについては、従来のハードバップな演奏に終始している。マクリーンのチャレンジなどには無関心。ちょっとバランスの悪いセッションになっているのだが、マクリーンの先取性を感じ取る事が出来る。
1960年9月1日の録音もメンバーは異なるが(ベースのポルチェンだけ一緒)、マクリーンの先取性が耳に残る。従来のハードバップな吹き方とはちょっと工夫して、新しい響きにチャレンジしている様に聴こえる。「Appointment in Ghana」など、テーマが意外と先進的。といっても、他のメンバーは1959年1月18日の録音と同様、従来のハードバップな演奏に終始しているが、皆、絶好調。演奏内容として上質の出来。
この盤を聴くと、マクリーンは「進歩するジャズマン」だったことが良く判る。それが、アルフレッド・ライオンの狙いだったのかもしれない。当時の新しいジャズの演奏トレンドにいち早く対峙して、自分なりに工夫して、新しい響きを獲得しようと努力する。そんなマクリーンの先取性がこの盤から聴いて取れる。この後、マクリーンは、ブルーノート・レーベルの録音の中で、新しいジャズの演奏トレンドに積極果敢に挑戦していくのだ。
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