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2021年7月31日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・215

1970年代は、前半はジャズとロックの融合が主流のクロスオーバー・ジャズが流行、後半はクロスオーバー・ジャズに、ソフト&メロウなAORの要素とソウル・ミュージックからR&Bの要素を加えた、フュージョン・ジャズが流行した。しかし、その傍らで、欧州を中心に、純ジャズは脈々と深化を続け、根強い人気を維持した。米国においても欧州ほどではないにしろ、同様だった記憶がある。

L.A.4『Going Home(家路)』(写真)。1977年9月29, 30日の録音。日本のEast Windレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ray Brown (b), Shelly Manne (ds), Laurindo Almeida (g), Bud Shank (as, fl)。バド・シャンクのアルト・サックス&フルートが1管フロント、ピアノレス、代わりにブラジルのギタリスト、ローリンド・アルメイダが参加している。

L.A.4は、1974年から1982年にかけて、ロサンゼルスを拠点に定期的に活動したカルテット。米国西海岸のレジェンド級のジャズマンが参加。とても優れた演奏テクニックと内容で聴く者を魅了した。活動時期が、ちょうどクロスオーバー・ジャズ〜フュージョン・ジャズの全盛期に被っていたので、かなり損をしているが、玄人好みの小粋でポップな純ジャズは今の耳にも十分に訴求する。
 

Going-home
 

4人のジャズマンの個性が明確で、アレンジも良好、小粋で聴かせるアドリブ・パフォーマンスに、旧来の米国西海岸ジャズらしさをヒシヒシと感じる。レイ・ブラウンのベースは骨太で旋律弾きのテクニックは抜群、シェリー・マンのドラムは卓越したテクニックが凄い。アルメイダのギターは独特の哀愁感を湛え、シャンクのアルト&フルートはブリリアントで流麗で聴き心地満点。

収録曲がバリバリの「どスタンダード曲」ばかりだが、気にすることは無い。アレンジ&演奏テクニックが途方も無く良好なので、陳腐で俗っぽいところは全く無い。冒頭のタイトル曲「Going Home(家路)」など、皆が良く知っている俗っぽいメロディーだけに、平凡で陳腐な演奏になりがちだが、この盤での「家路」はそんなところは全く無い。曲の持つ哀愁感をしっかりとジャジーにポップに聴かせてくれる。

5曲目の「Recipe of Love(恋の料理法)」は、これだけの実績あるメンバーを揃えながら、4人の演奏について、とてもバランスが取れた秀逸な内容。プロデュースがバッチリ填まっている。ラストの有名曲「Django」も良好なアレンジで、俗っぽいところは微塵も無い。LPでのリリース時は、録音当時に流行していた「ダイレクトカッティング盤」である。とにかく音が良い。米国西海岸ジャズの良いところが反映された秀作です。
 
 
 
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コメント

こんにちは。LA4のGoing Homeの記事を探していたらこちらにたどりつきました。オーディオに興味を持ち趣味としては45年ほどになります。CDが出はじめたころ、「Stereo」がCDの録音採点をしていた時期がありましたが、その当時も機器のサウンドチェック用の優秀録音盤として使っていた時期もあったような気がします。昔の雑誌(1985年)を引っ張り出して来たら、採点表がありまして、総合点9.8点(満点は10点)。
近く(でもないですが)のTAD(パイオニア)のSPとアキュフェーズのアンプを置いてあるそれこそジャズ喫茶で、ほかのお客さんがいなくなったタイミングで実際の楽器の音量くらいでこのCDを聞かせてもらいましたが、やはり今でも素晴らしい録音だと再認識しました。一聴、録音レベルが低いのかと思いますが、これは録音時にコンプレッション処理をせず、生演奏のダイナミックレンジをそのまま取り込んだためだと思います。

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    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
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