爽快感抜群の「TPサウンド」
雑誌 Jazz Life の「Disc Grand Prix 年間グランプリ」の記事を読んでいて、懐かしいバンドの名前に出くわした。「Tower of Power(タワー・オブ・パワー)」である。凄く懐かしいバンド名。「タワー・オブ・パワー」は、米国カリフォルニア州オークランドを起源とした「ファンク+R&B」志向のホーン・セクション&バンド。1970年のデビュー。
特にホーン・セクションの威力抜群で、1970年代前半は「ブラス・ロック」なんて形容されていた。しかし、ベースはソウル・ミュージック志向のジャズ・ファンクで、採用されたリズム&ビートは明らかに「ジャズ」。ただロック風の展開もあるので、音の位置づけとしては、ホーン・セクションを駆使したクロスオーバー・ジャズ志向のファンク・バンドだろう。
さて、このタワー・オブ・パワー、活動の最盛期は1970年代前半から中盤。ディスコ・ブームに乗り遅れ、その名前は忘れられていったが、バンド活動は継続。2021年の現在もバンドは活動出来る状態で存在する。2018年『Soul Side of Town』が秀逸な出来で復活を印象付け、昨年のこの盤は、往年のタワー・オブ・パワーのアルバムの中でも白眉の出来。クロスオーバー・ジャズ志向のファンク+R&Bの音作りが今の耳に新鮮に響いている。
Tower of Power『Step Up』(写真左)。2020年3月のリリース。オリジナルメンバーである4人、エミリオ、スティーヴン“ドク”クプカ、デヴィッド・ガリバルディ、フランシス“ロッコ”プレスティアは健在。ほぼ現在のメンバーに落ち着いてから20 年以上経つとのこと。当然、出てくる音は1970年代に僕が聴き親しんだ「TPサウンド」。
音作りの傾向から、前作『SOUL SIDE OF TOWN』と対をなす「兄弟盤」と言える。もともと、2016年夏の時点で優にアルバム2枚分の楽曲をレコーディングしており、そこから13曲を仕上げて、前作『SOUL SIDE OF TOWN』に収録。残った中から再び13曲を完成させて、この新作『STEP UP』にした、ということらしい。
なるほど、音の志向&傾向が同じですよね。心地良い、1970年代から培ってきた「クロスオーバー・ジャズ志向のファンク+R&Bの音」が、これまた懐かしいホーン・セクションの独特のアレンジの下、鳴り響いている。良いアルバムです。純ジャズの合間に、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの好盤を愛でる。爽快感抜群です。
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