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2021年5月24日 (月曜日)

西海岸の異色のピアノ・トリオ盤

米国西海岸ジャズ、いわゆる「ウエストコースト・ジャズ」は奥が深い。もともと我が国では「一度は忘れ去られたジャズ」だった米国西海岸ジャズである。圧倒的に情報が不足していた。21世紀に入って、単行本含めて、米国西海岸ジャズについての紹介本が発刊されたりで、以前よりは情報が整理されてきた。それでも、まだまだ、その全貌は掴みきれていないのが正直なところ。

『Bernie Nerow Trio』(写真左)。1957年7月、ハリウッドでの録音。ちなみにパーソネルは、Bernie Nerow (p), Max Wayne (b), Dick Stein (ds)。ピアノの「バーニー・ニーロウ」がリーダーのピアノ・トリオ編成。イラストのジャケットが特徴の、幻の西海岸ジャズレーベルである「モード・レーベル」からのリリース。

他にリーダー作が無い、バーニー・ニーロウの稀少な作品。稀少な作品なので、このバーニー・ニーロウというピアニスト、結構、悲劇的なキャリアをしているのかと思ったら、ネットの情報を紐解くと「後年ピーター・ネロと名乗り、イージー・リスニングの世界に身を投じ一世を風靡した」とのこと。おお、ピーター・ネロって名前は聞いたことがあるぞ。なんだ、後年はイージー・リスニング畑の有名人なのね。
 

Bernie-nerrow-3
 

ジャズへの傾倒については、これもネットの情報を紐解くと「幼少の頃からクラシック音楽を学びコンサート・ピアニストを目指していた彼がアート・テイタムとの出会いからジャズに目覚めた」とある。クラシック・ピアノの素養がかなりある、加えて、アート・テイタムに感化されたということは、ピアノ弾きのテクニックは相当なものがあると見た。

で、このトリオ盤である。聴くとその内容はユニーク。おおよそ、当時流行っていたハードバップ志向のジャズでは無い。米国西海岸ジャズの特徴である「アレンジに優れた聴かせるジャズ」でも無い。クラシック・ピアノの様な端正な弾き回しとアート・テイタムばりのジャジーな高速弾き回しで聴き手を圧倒する。ピアノ・トリオ編成ではあるが、ピアノだけが前へ出て弾きまくる。ベースとドラムのリズム隊はリズム・キープに徹している。

「クラシック音楽とジャズの融合」と「ジャズピアノにおけるオーケストラ奏法への挑戦」がテーマとのこと。その情報を得て合点がいった。内容的には「ビ・バップ」に近いが、フレーズの雰囲気が「どっぷりジャズ」では無く、どこか「クラシック風」なのだ。ハイ・テクニックにまかせて高速な即興フレーズを弾きまくるのは、バド・パウエルばりだが、ジャジーな雰囲気が希薄なところが、どこか米国西海岸ジャズっぽくて面白い。クラシック風の高速な即興フレーズが個性の「異色のピアノ・トリオ盤」として聴くと違和感は無い。
 
 
 

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