西海岸の異色のピアノ・トリオ盤
米国西海岸ジャズ、いわゆる「ウエストコースト・ジャズ」は奥が深い。もともと我が国では「一度は忘れ去られたジャズ」だった米国西海岸ジャズである。圧倒的に情報が不足していた。21世紀に入って、単行本含めて、米国西海岸ジャズについての紹介本が発刊されたりで、以前よりは情報が整理されてきた。それでも、まだまだ、その全貌は掴みきれていないのが正直なところ。
『Bernie Nerow Trio』(写真左)。1957年7月、ハリウッドでの録音。ちなみにパーソネルは、Bernie Nerow (p), Max Wayne (b), Dick Stein (ds)。ピアノの「バーニー・ニーロウ」がリーダーのピアノ・トリオ編成。イラストのジャケットが特徴の、幻の西海岸ジャズレーベルである「モード・レーベル」からのリリース。
他にリーダー作が無い、バーニー・ニーロウの稀少な作品。稀少な作品なので、このバーニー・ニーロウというピアニスト、結構、悲劇的なキャリアをしているのかと思ったら、ネットの情報を紐解くと「後年ピーター・ネロと名乗り、イージー・リスニングの世界に身を投じ一世を風靡した」とのこと。おお、ピーター・ネロって名前は聞いたことがあるぞ。なんだ、後年はイージー・リスニング畑の有名人なのね。
ジャズへの傾倒については、これもネットの情報を紐解くと「幼少の頃からクラシック音楽を学びコンサート・ピアニストを目指していた彼がアート・テイタムとの出会いからジャズに目覚めた」とある。クラシック・ピアノの素養がかなりある、加えて、アート・テイタムに感化されたということは、ピアノ弾きのテクニックは相当なものがあると見た。
で、このトリオ盤である。聴くとその内容はユニーク。おおよそ、当時流行っていたハードバップ志向のジャズでは無い。米国西海岸ジャズの特徴である「アレンジに優れた聴かせるジャズ」でも無い。クラシック・ピアノの様な端正な弾き回しとアート・テイタムばりのジャジーな高速弾き回しで聴き手を圧倒する。ピアノ・トリオ編成ではあるが、ピアノだけが前へ出て弾きまくる。ベースとドラムのリズム隊はリズム・キープに徹している。
「クラシック音楽とジャズの融合」と「ジャズピアノにおけるオーケストラ奏法への挑戦」がテーマとのこと。その情報を得て合点がいった。内容的には「ビ・バップ」に近いが、フレーズの雰囲気が「どっぷりジャズ」では無く、どこか「クラシック風」なのだ。ハイ・テクニックにまかせて高速な即興フレーズを弾きまくるのは、バド・パウエルばりだが、ジャジーな雰囲気が希薄なところが、どこか米国西海岸ジャズっぽくて面白い。クラシック風の高速な即興フレーズが個性の「異色のピアノ・トリオ盤」として聴くと違和感は無い。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況》
★ AORの風に吹かれて 【更新しました】 2021.03.06 更新。
★ まだまだロックキッズ 【更新しました】 2021.03.06 更新
・Yes Songs Side C & Side D
・Yes Songs Side E & Side F
★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.03.06 更新。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から10年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« ピアノ・トリオの代表的名盤・91 | トップページ | ハードバップの良いところ満載 »
コメント