モードに変化するJM 『The Big Beat』
ブルーノート・レーベルの1500番台、そして、4000〜4423番の中で、アート・ブレイキー単独名義とアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ名義のアルバムを併せると全部で23枚あるのだそうだ。この記録は「第2位」。ちなみに第1位は、ジミー・スミスで27枚。
取りも直さず、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズはブルーノートの看板バンドだったのだが、我が国では意外と盤毎に人気のバラツキがある。ファンキー・ジャズの代名詞的アルバム『Moanin'』は大人気盤なのだが、その次は、と問われれば、意外と具体的な盤名が出てこないジャズ者の方々が多い。どうも、ジャズ・メッセンジャーズって、我が国では意外と人気が薄いのではないか、と思っている(僕にはお気に入りバンドのひとつですが)。
Art Blakey & Jazz Messengers『The Big Beat』(写真左)。1960年3月6日の録音。ブルーノートの4029番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp, flh), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。モーガンのトランペット、ショーターのテナーの2管フロントのクインテット編成。
実はこの盤、かのファンキー・ジャズの代名詞的アルバム『Moanin'』のすぐ後のスタジオ録音盤なのだ。『Moanin'』の録音が1958年10月末なので、この『The Big Beat』は、僅か4ヶ月後の録音になる。メンバーを見渡すと、テナーがベニー・ゴルソンからウェイン・ショーターに代わっているだけ。
しかし、この盤を聴くと、内容的に『Moanin'』を踏襲したファンキー・ジャズかと思いきや、これまた違った雰囲気のファンキー・ジャズになっているから面白い。『Moanin'』は「こってこてファンキー」な内容だったが、この『The Big Beat』は、「クールで大人でアーバンな」ファンキー・ジャズに変化している。
ショーターのテナーが引き金になっている。ショーター以外のメンバーは、ファンキー・ジャズを踏襲した、正統なハードバップ志向だが、ショーターのパフォーマンスだけ、ちょっと響きが異なる。モーダルでクールなフレーズが見え隠れしていて、熱いファンキーな雰囲気というよりは、クールで理知的な雰囲気になっている。そして、他のメンバーが、このショーターの「異質な雰囲気」に感化されて、演奏全体が「クールで大人でアーバンな」ファンキー・ジャズに変化しているのだ。ショーター恐るべし、である。
曲の雰囲気もどこか「クールで理知的な」雰囲気が漂う楽曲があって、作曲者を見ると、やはりショーターが書いている。正式には全6曲で、その6曲中、半分がショーター作。どこかエキゾチックでどこかモーダルなショーターの曲の存在が、この盤の雰囲気を「クールで大人でアーバンな」ファンキー・ジャズに変えている。
ジャズ・メッセンジャーズが、こってこてファンキーなジャズからモーダルなジャズへ変貌する、最初の姿がこの盤に記されている。この盤に記録されている「クールで大人でアーバンな」ファンキー・ジャズ、なかなかお洒落で聴き応えがある。特にラストの「It's Only a Paper Moon」はずっと僕のお気に入り曲の1つで、典型的な「クールで理知的な」ファンキー・チューンに仕上がっている。
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