「アフロ・キューバン」の先駆け 『Holiday for Skins』
ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは、アート・ブレイキーと組んで、後に「ライオンの狂気」と形容される、打楽器中心のリズム&ビートを前面に押し出した企画盤を3種類出している。1つは『Orgy In Rhythm』、そしてもう1つは、今回ご紹介する『Holiday for Skins』そして『The African Beat』。
これらの企画盤は「ライオンの狂気」として片付けるにはあまりに短絡的だろう。確かにこの企画盤は売れないだろう。しかし、音楽芸術として鑑賞にしっかり耐える内容であり、演奏内容は実に優れたものだ。
Art Blakey『Holiday for Skins vol.1 & 2』(写真)。1958年11月9日の録音。ブルーノートの4004、4005番。1554、1555番の『Orgy In Rhythm』に続く、ブレイキーの打楽器中心のリズム&ビートを前面に押し出した企画盤の第二弾。
ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds, chanting), Donald Byrd (tp), Ray Bryant (p), Wendell Marshall (b), Art Taylor (ds), Philly Joe Jones (ds, chanting, vo), Ray Barretto, Victor Gonzales, Julio Martinez, Sabu Martinez, Chonguito Vincente (bongos, congas), Fred Pagani (timbales), Andy Delannoy (maracas), Austin Cromer, Hal Rasheed (chanting)。
第一弾の『Orgy In Rhythm』は「アフリカン・ネイティブ」な打楽器の饗宴。どう聴いても「ジャズ」ではない。アフリカのリズム&ビートの洪水。が、この第二弾は、パーソネルの担当楽器を見渡せば何となく判る。そう「アフロ・キューバン」。アフロ・キューバンなリズム&ビートの洪水である。
しかし、メンバーについては、第一弾の時の Ray Bryant (p), Wendell Marshall (b), Arthur Taylor (ds), Sabu Martinez (perc.vo) は引き続きサイドマンとして参加している。つまり、リズム&ビートの要となる「リズム・セクション」は、第一弾の『Orgy In Rhythm』のリズム・セクションを継続している。
この辺が、リーダーのブレイキーとプロデューサーのライオンの明快な「深慮遠謀」が感じられる。単に思いつきと気合いだけで、この企画盤を企図して制作した訳では無い。
「アフロ・キューバン」なので、トランペットを補強。ドナルド・バードが担当している。このトランペットの存在が、演奏全体のメロディやフレーズを明確にしていて、この盤については、第一弾の『Orgy In Rhythm』とは異なり、しっかり「ジャズ」している。つまりは、演奏全体の雰囲気は「アフロ・キューバン・ジャズ」なのだ。
サブー 率いるパーカッシヨン隊の「リズムの洪水」の様なポリリズムが見事で、ボンゴ、コンガ、マラカスなどの打楽器の音そのものが「アフロ・キューバン」な雰囲気を濃厚なものにしている。
「アフロ・キューバン」の先駆けであり、ワールド・ミュージック志向の先駆けでもあり、まさに時代を先取りした驚異的な実験作。1958年という時期に、よくまあ、こんな先進的な盤を企図し録音したと思います。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの「ジャズの根源、ジャズの本質」を突いたプロデュース。そして、それを的確に実現したリーダーのブレイキー。当時のブルーノートでしか為し得ない「快挙」だと思います。
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