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2021年3月23日 (火曜日)

聴けば聴くほど味わい深い

ブルーノートには総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの他に名物男が幾人かいる。Bennie Green(ベニー・グリーン)もそんな1人。この人のリーダー作は、いずれも録音当時のジャズのトレンドや志向について全く意に介さない、というか、自らのスタイルを貫き通したジャズマンで、ブルーノートの1500番台の中で「異質な存在」である。

Bennie Green『Soul Stirrin'』(写真左)。ブルーノートの1599番。1958年4月28日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb, vo), Gene Ammons, Billy Root (ts), Sonny Clark (p), Ike Isaacs (b), Elvin Jones (ds), Babs Gonzales (vo)。トロンボーン奏者のベニー・グリーンのリーダー作。トロンボーンとテナー・サックス2本のフロント3管の変則セクステット編成にボーカルが3曲に加わる。

ベニー・グリーンは1923年生まれなので、録音当時35歳。ジャズマンとしては中堅の若手といったところで、決して歳を取っている方では無い。むしろ若い方だ。しかし、出てくる音は当時としても「古い」。スイング時代のトロンボーンのマナ−で吹きまくるのだ。スインギーで唄うが如くの部分は後の「ソウル・ジャズ」を先取りしているともいえる。とにかく、録音当時のハードバップの流行もマナーも全く無い。

  
Soul-stirrin-1

 
これがベニー・グリーンというトロンボーン奏者の個性であり、これが実にユニーク。ジャズ・トロンボーンであれば、当時としては、ジャズ・トロンボーンのバーチュオーゾ、J.J.Johnson(ジェイ・ジェイ・ジョンソン)が最高峰で、ジャズ・トロンボーン奏者であれば、この「ジェイジェイ」に追従するのだが、ベニー・グリーンは全くその気配すら無い。あくまで、スイングであり、あくまでソウルフルである。

今回のセッションでは、セクステットの中に、若きソニクラとエルヴィンが入っている。ソニクラはハードバッパーであり、ファンキー・ジャズ志向のピアニスト。エルヴィンは新進気鋭、ポリリズムとモード・ジャズ志向のドラマー。スイングでソウルフルなベニー・グリーンの下で、神妙にベニー・グリーンの音の志向に全く違和感無く追従している。

この2人も音の志向が全く違えど、これまた「プロ」である。1920年代生まれと1930年代生まれの世代が分かれたメンバーでのセッションであるが、明らかにリーダーのベニー・グリーンが音の志向のイニシアチヴを取っている。我が国では全く人気の無いベニー・グリーンであるが、聴けば極上のモダン・ジャズにありつけること間違い無い、素敵な隠れ好盤だと僕は評価している。ほんわか伸び伸び、聴けば聴くほど味わいは深くなる。
 
 
 

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