静的な天才パウエルを押さえる
ブルーノート・レーベルの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは大のジャンキー嫌い。ジャズマンには「ジャンキー」が多い。クラブとかアルバムのレコーディングのギャラを麻薬に注ぎ込むジャズマンは数知れず。それでも、ライオンはどれだけ優れたジャズマンでも、ジャンキー、いわゆる麻薬常習者にはレコーディングの声をかけなかった。
ブルーノートはビ・バップからハードバップ時代の一流のジャズマンについては、ほとんど押さえているところが凄いんだが、チャーリー・パーカーの音源は無い。アート・ペッパーも無い。基本的に麻薬常習者はどれだけ優れたジャズマンでも御法度なのだ。健全な体と精神にこそ良い音が宿る。それを身上としていたのがアルフレッド・ライオンである。
『Time Waits: The Amazing Bud Powell Vol.4』。(写真左)。1958年5月の録音。ブルーノートの1598番。ちなみに、Bud Powell (p), Sam Jones (b), Philly Joe Jones (ds)。バド・パウエルお得意のトリオ編成。ブルーノートでのレコーディングらしく、ベースにサム・ジョーンズ、ドラムにフィリージョー。
麻薬中毒やアルコール中毒に陥り、精神病院にも収監されていた時期を経て、健康状態が改善された時期の録音である。バド・パウエルについては、ブルーノートは、彼の健康状態が改善されたタイミングで、5枚のリーダー作を録音している。他のレーベルの録音と比較して、確かに全盛期に比べて天才的な弾き回しは無い。でも、個性と味のあるピアノはさすが。
派手な弾き回しや天才的な閃きアドリブなどを聴くことは皆無、どちらかと言えば、パウエルにしては「優しい」弾き回しが、破滅派天才ピアニスト、バド・パウエルのイメージと合わないのか、この「Vol.4」は、ブルーノートのパウエル盤で一番人気が無い盤。でも、この盤、精神状態の穏やかなパウエルの弾き回しを聴いている感じがする。とても優しく、とても誠実な弾き回しなのだ。
端正でジェントルで真摯なパウエルのピアノ。これってブルーノートでないと聴けない代物。このピアノが意外とパウエルの本質だったりして、と思って聴くと、本当にしみじみとしてしまう。動的な表現力も凄いが、静的な表現力も凄い。やはりパウエルは天才だった。そんな静的なパウエルを押さえたブルーノート。凄いなあ、と思う。
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