小粋な「現代のハードバップ」
ドラマーのリーダー作の狙いは、ドラマーのジャズの志向をバンド・サウンドで具現化する、この1点に集約される。ドラマーのドラミングは、演奏するジャズの志向、トレンドによって変化する。その志向、トレンドに一番相応しいリズム&ビートを供給するのだ。そして、自らのリーダー作の場合は、自らのジャズの志向、トレンドをベースに、バンド・サウンドをプロデュースする。
Joe Farnsworth『Time to Swing』(写真左)。2019年12月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farnsworth (ds), Kenny Barron (p), Peter Washington (b), Wynton Marsalis (tp)。人気白人ドラマーのジョー・ファンズワースの、Smoke Sessions Recordsからの初リーダー作になる。
ジャズの情報サイトでは、ファンズワースは人気白人ドラマーというが、僕はつい最近まで、ファンズワースの名前を知らなかった。ファンズワースは、1968年マサチューセッツ州生まれ。このリーダー作の録音当時は51歳。油の乗りきったベテラン・ドラマーである。
数々の共演歴があり、その共演歴の資料を見て、該当するアルバムのパーソネルをみれば、ファンズワースの名前を見つけることが出来る。う〜ん、長い間、ファンズワースのこと、知らなかったなあ。
音のエッジが立って、見通しの良い音は現代の「今」の音なんだが、出てくるジャズは「ハードバップ」。奏法の基本はモードだが、難しいことは一切やっていない。判り易く聴き易いネオ・ハードバップと評しても良い。聴いていて、どこかホッとして、どこか懐かしい「あの頃のハードバップ」の演奏を「今」の音で「今」の楽器でやっている。それだけでも良い雰囲気のアルバムである。これがファンズワーズのジャズの音の志向のひとつなのだろう。
ファンズワーズのドラミングは切れ味良くエッジが立って、響きがタイトでスインギー。緩んだところがない、シュッとキビキビしたドラミング。そんなリズム&ビートに「純正ハードバップ」な演奏が乗ってくるのだから堪らない。
収録曲は全11曲、前半4曲がトランペット1管のワンホーン・カルテット演奏、後半の6曲目からはピアノ・トリオ演奏。トンランペットについては「どこかで聴いたことがある」音で、小難しいことをやっていないので、最初は判らなかったが、ウィントン・マルサリスがトランペットを吹いている。
小難しいことをせず、素直に判り易く聴き易いモーダルなトランペットを吹きまくるウィントンは「無敵」である。ピアノは聴いていると何と無く判る。「総合力勝負」のジャズ・ピアニストの代表格、ケニー・バロンのピアノである。端正で明快なタッチでの弾きっぷりは誠に見事。小粋でスインギーな内容の「現代のハードバップ」。好盤です。
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