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2020年12月23日 (水曜日)

コルトレーンの「扱いに困る」盤

プレスティッジ時代のコルトレーンのリーダー作とされる盤の中には、リーダー作で無いのもある。アトランティックへ移籍後、爆発的に人気の出たコルトレーン。リーダー作として出す盤出す盤、結構、売れたらしい。そこで、プレスティッジ・レーベル、既に別人名義のコルトレーンの参加したセッションの音源を再編成して、あたかもコルトレーンのリーダー作としてリリースする暴挙に出た。

John Coltrane『Dakar』(写真左)。1957年4月20日の録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), Cecil Payne, Pepper Adams (bs), Mal Waldron (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。録音日を見ただけでは、プレスティッジ・レーベルには珍しく単一日のセッションで固めたコルトレーンのリーダー作みたいに見える。が、これが違うんだから、プレスティッジの暴挙には困惑する。

実はこの盤、コルトレーンがサイドマンとして参加した、既リリースの別人名義のセッションの音源を再編成、あたかもコルトレーンのリーダー作としてリリースした「パチモン」盤である。1957年の4月、18日から20日にかけて3日間連続で「The Prestige All Stars」または「Mal Waldron Sextet」のサイドマンとして、としてプレスティッジに録音。この『Dakar』は、この3日連続録音の最終日の4月20日「The Prestige All Stars」名義のセッションを再編成したもの。
 
 
Darkar_john-coltrane  
 
 
しかも録音時の記録を見ると、1957年4月20日の「The Prestige All Stars」名義のセッションを「まるっと」そのまま、録音順に並べただけ。レーベルのプロデューサーとして何も考えずに、ただLPのA面B面に「まるっと」入る長さの演奏なので、思わず、偽りの「コルトレーン名義」盤として出しちゃいました、というイージーで罪作りな盤である。よって、この盤は正しくは「コルトレーン名義」のリーダー作ではない。

1957年に録音され「The Prestige All Stars」名義でリリースされた時は、セシル・ペインとペッパー・アダムスの2本のバリサクを「ウリ」にしたアルバム。バリサク2本+テナー1本の3管フロントはユニークだが、惜しむらくはアレンジ、アドリブともに、ちょっと定型的で創造性に欠けるきらいがある。先が読めちゃうので飽きが来るのだ。ただ、バリサク2本の音の迫力は凄い。バリサクの音を浴びる様に聴きたい時には最適な盤の一枚ではある。

この盤の全体の印象は、コルトレーンがメインというよりは、2本のバリトン・サックスが主軸のジャム・セッション、重厚なハードバップ演奏。コルトレーンのプレイを聴いても、コルトレーンの個性は確認出来るが、中途半端で中程度の出来。特別にコルトレーンを聴くアルバムでは無いだろう。ジャケ・デザインも適当。まったく、プレスティッジ・レーベルの暴挙には困ったものである。
 
 
 

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