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2020年12月 5日 (土曜日)

This Is Criss! とは言い得て妙

ライトで聴き易いジャズが聴きたくなって、ウエストコースト・ジャズ(西海岸ジャズ)である。サックス系のアルバムが聴きたくて、ソニー・クリス(Sonny Criss)のリーダー作を選盤する。ソニー・クリスは西海岸ジャズの中で、優秀なアルト・サックス奏者ではあるが、ちょっと躁状態のプレイが多くて、明るくてブリリアントで良いのだが、時々、耳に付くところがあって、選盤には注意が必要。

Sonny Criss『This Is Criss!』(写真左)。1966年10月21日、NYの Van Gelder Studio での録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Criss (as), Walter Davis Jr. (p), Paul Chambers (b), Alan Dawson (ds)。1966年の録音なので、ジャズの世界では、西海岸ジャズ、東海岸ジャズの区別が無くなって、西海岸ジャズ出身のクリスが、東海岸のNYに出向いての録音になっている。

パーソネルが良い。ベースに名手ポール・チェンバース、ピアノに玄人好みの伴奏の達人、ウォルター・デイビス・ジュニア。ドラマーのアラン・ドーソンだけがちょっと聴き馴れない名前だが、当時、ボストンにおける代表的ドラマーだったそうだ。たまたまNYにいたのか、NYに呼んだのかは判らないが、聴けば、なかなか味のあるドラミングである。
 
 
This-is-criss
 
 
さて、この盤、冒頭の「Black Coffee」、なんとも言えない「女心」を表したジャズのスタンダード曲だが、まさかこの曲で、躁状態のクリスのアルト・サックスが元気よく出てくるのでは、と身構えたのだが、しっとりとした、情緒溢れる、抑制されたアルト・サックスの音色にホッとする。良い感じのクリスのアルト・サックス。これはいける、と座り直して、クリスのブロウに耳を傾ける。

全8曲中、6曲がスタンダード曲で占められている。この盤でのクリスは、躁状態の明るすぎるアルト・サックスを全く出さずに、情緒溢れる、耽美的でリリカルで、それでいて、ちょっと明るいフレーズを連発して、小粋なスタンダード曲に暖かい彩りを添えている。クリスの「明るい」音色のアルト・サックスが良い方向に作用している。

バックのリズム隊も優れた伴奏を展開していて、クリスのアルト・サックスをしっかりと支えている。クリスのワンホーン・カルテット、実に良い感じのパフォーマンスだ。タイトルが「This Is Criss!(これがクリスだ!)」。言い得て妙である。クリスの代表盤の1つに数えて良い好盤です。
 
 
 

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