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2020年11月 7日 (土曜日)

サド・ジョーンズの良質の個性

「ハードバップの名演の宝庫」と形容されるブルーノート・レーベルの1500番台には、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の名盤紹介には滅多に出ないが、聴けば、それはそれは、いかにもハードバップらしい、極上のモダン・ジャズの雰囲気を湛えた、渋く小粋な内容の「知る人ぞ知る」好盤がゴロゴロしている。

Thad Jones『The Magnificent Thad Jones Vol.3』(写真左)。ブルーノートの1546番。お馴染みVan Gelder Studioでの録音。パーソネルがちょっと複雑。1曲目から4曲目までが、1957年2月3日の録音で、Thad Jones (tp), Benny Powell (tb), Gigi Gryce (as), Tommy Flanagan (p), George Duvivier (b), Elvin Jones (ds)。

5曲目は、前作の好盤『The Magnificent Thad Jones』に収録されなかった演奏で、この曲だけ、録音月日とパーソネルが異なっていて、1956年7月14日の録音で、Thad Jones (tp), Billy Mitchell (ts), Barry Harris (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)。好盤『The Magnificent Thad Jones』セッションから収録が漏れた演奏である。その内容は申し分無い。
 
 
The-magnificent-thad-jones-vol
  
 
サド・ジョーンズのトランペットは、ハイノートを決めて、エネルギッシュに吹きまくるハード・バッパーでは無い。中低音域を上手く活かして、音の芯はしっかりしているが、柔らかで優しい、ほのぼのとしたトランペットが身上。テクニックもそのレベルは高いが、そのテクニックの高さを前面に出さずに、ミッドテンポの安定したアドリブ・フレーズをほんわかと吹き上げ続ける。

加えて、サドのトランペットは意外と「リリカル」。1曲目から4曲目のパーソネルで演奏される各曲で、サドのミッドテンポでリリカルなトランペットが映えに映えている。恐らくメンバーの人選が良いのだろう。こういうリリカルなトランペットには、伴奏上手なトミフラのピアノがバッチリ合う。硬軟自在なエルヴィンのドラミングもグッド。

ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンのプロデュースの効果だろうか、サド・ジョーンズのトランペットの「良質の個性」がクッキリと浮かび上がってくる様な好盤。問題はジャケットで、この盤のジャケットはブルーノートらしくない。タイポグラフィーも写真も平凡と言えば平凡。恐らくこの盤、ジャケットでかなり損をしているんじゃないか、と思っている。
 
 
 

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