ミスマッチのようで実は相性抜群
ジャズって面白いもので、演奏者の組み合わせを見て、そのそれぞれの演奏スタイルを思い浮かべて、どう考えてもミスマッチで「こんな組み合わせは聴きたく無いな、聴いたってロクなことは無い」と思うことがたまにある。が、意外と実はそんな組み合わせにこそ「組み合わせの妙」的な好盤が生まれることがある。ジャズには先入観って危険。まずは自分の耳で聴いてみることが大事である。
『Kenny Burrell & John Coltrane』(写真左)。1958年3月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), John Coltrane (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。素敵なメンバーでのクインテット構成。特にリズム・セクションに「名盤請負人」トミフラのピアノと「燻し銀ドラマー」のコブが配置されているところがミソ。まあ、プレスティッジからのリリースなので、この素敵なメンバー構成も偶然なんだろうけど(笑)。
さて、このプレスティッジの企画盤『ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン』って、シーツ・オブ・サウンドが「ウリ」のエモーショナルで切れ味の良いコルトレーンのテナーと、夜の雰囲気が良く似合うブルージーな漆黒ギターのバレル、どう考えたって「合う訳が無い」と思うのだが、これが実は「合う」んですよね。
出だしの1曲目「Freight Trane」は「あ〜やっぱり合わないな」なんて、コルトレーンとバレルのミスマッチの予感を実際に確認して、直感は当たっていた、とほくそ笑んだりする。が、2曲目の「I Never Knew」、3曲目の「Lyresto」と聴き進めていくと、「ん〜っ」と思い始める。コルトレーンがバレルに合わせ始めるのだ。シーツ・オブ・サウンドで吹きまくるコルトレーンでは無く、ブルージーなバレルの漆黒ギターに合わせて、歌心溢れるブルージーなテナーに変身し始めるのだ。
そして、4曲目の優しいバラード曲「Why Was I Born?」。この演奏、コルトレーンとバレルのデュオなのだが「これが絶品」。ブルージーで黒くて優しくて骨のあるバレルの漆黒ギターの伴奏に乗って、コルトレーンが、それはそれは歌心溢れる優しいテナーを奏でる。すると、代わって、黒くて優しくて骨のあるバレルの漆黒ギターが「しっとり」と語りかける。この演奏を聴くだけの為に、このアルバムを手に入れても良い位の名演である。
こんな時、ジャズって柔軟な音楽だなって、改めて感心する。昔、ジャズ盤紹介本で、この盤ってミスマッチの極致の様に書かれていた記憶があるが、パーソネルを見ただけで評価したのではないだろうか。ようは「如何に相手の音をしっかり聴いて、最適の音でしっかり返すか」である。つまりはバレルとコルトレーン、ミスマッチのようで実は相性抜群。なんだかジャズの世界って、人間の男女の仲に良く似ている。
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