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2020年11月 9日 (月曜日)

ドーハムにしみじみする 『Showboat』

晩秋である。最低気温も10度を切って、季節は冬への歩みを始めた様だ。部屋から眺める空も陽射しも弱くなって、なんだかしみじみする。こういう時はジャズが良いが、ハードなイメージのジャズは駄目だ。芯がしっかりしていて、それでいて癒されるような、歌心のあるジャズ盤が良い。良い塩梅で「しみじみ」したいのだ。

そんな盤あったかなあ、と思いながら、アルバム棚を見渡す。すると、おお、あったではないか。トランペットのケニー・ドーハムである。彼のトランペットは中音域を多用しながら、芯がしっかりしているが、まろやかな歌心あるトランペットが特徴。テクニックは基本的に優秀。好不調の波が少ない、安定した吹き回しが良い。

Kenny Dorham『Showboat』(写真左)。1960年12月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jimmy Heath (ts), Kenny Drew (p), Jimmy Garrison (b), Art Taylor (ds)。ジャケットを見れば「ピン」と来る、タイム・レーベルからのリリース。リーダーのケニー・ドーハムのトランペットと、渋い玄人好みのジミー・ヒースのテナー・サックスの2管フロントのクインテット編成である。
 
 
Showboat-kenny-dorham  
 
 
この盤は「企画盤」で、タイトル通り、Oscar Hammerstein II(オスカー・ハマースタイン2世)の作詞、Jerome Kern(ジェローム・カーン)の作曲の『ショウボート』というミュージカルの挿入曲集になる。「スタンダード曲作りの名コンビ」によるミュージカル曲である。どの曲も素敵なメロディーを湛えた好曲ばかり。

こういう歌モノを吹かせたら、ケニー・ドーハムって結構イケる。まろやかな彼のトランペットが申し分の無いアルバムである。加えて、一聴すると「ロリンズみたいな音がするんだが、吹き回し自体はモブレーみたいな」渋い落ち着いたテナーで、誰だこれ、って思って、パーソネルをみたら、ジミー・ヒースでした。バックのリズム隊も好演で、ギャリソンなぞ、ベースをブンブン、魅力的に唸らせてます。

歌モノ中心の選曲ですが、決して甘く流れることなく、ドーハムのトランペットもヒースのテナーも、しっかりメリハリが効いていて飽きることが無い。バックのリズム・セクションも良好。決して、歴史に残る様な、ジャズ盤の入門書に必ず出てくる様な有名盤ではないが、リラックスして長きに渡って聴き続けることの出来る「愛聴盤」の類。これ、なかなか良いアルバムですよ。
 
 
 

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